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それはとある日曜日の朝のこと ハルヒに用事があるとのことで町内不思議探索は中止となり 布団に包まって気が済むまで寝ようとしていると携帯が鳴った ハルヒか?と思ってディスプレイを除いてみたが電話番号が表示されるだけで名前がない つまり電話帳に登録していない奴から電話がかかってきたと言うわけだな すでに5秒ぐらい着メロが鳴り続けているからワン切りでも無さそうだ これ以上鳴らして相手に迷惑をかける訳にもいかんだろう、間違いだったらその旨を伝えればいいだけだしな 「あ、もしもしキョンさんですか」 通話ボタンを押すと女の声が聞こえてきた 俺のあだ名を知ってると言うことは少なくとも間違い電話ではないと言うことだな もしこれで間違いだったらそのキョンとあだ名を付けられたやつに同情しよう 「え~っと失礼ですがどちら様で?」 「あ、ごめんなさい私は吉村美代子です」 思い出した、妹とは同級生だがとても同じとは思えないほどに大人びた容姿をしている娘だ 通称 ミヨキチ 、最後に合ったのはかなり前だ忘れてても仕方ないだろう 「あぁ君か、久しぶりだね、確か去年の3月の終わり以来か」 去年の3月の終わり俺とミヨキチは映画を見に行った、詳しくはSOS団の発行した部誌を見てくれ 「はい、お久しぶりです。」 「それにしても俺の携帯番号なんてよく解ったね」 「あ、はい妹さんから聞いたんです」 なるほどね、だがミヨキチぐらいなら教えてもかまわんがあまりいろいろな人に教えるなよ妹よ 「それで今お暇でしょうか?」 「あぁちょうど予定が無くなったんでね暇を持て余していたところだ」 「もし宜しければ今日1日私に付き合っていただけませんか?」 「あぁ別にかまわないよ、また映画かい?」 「はい、迷惑でしょうか?」 「意や別にかまわないよ、最近映画を見ていなかったしたまに見るのもいいだろう」 「よかった、ではよろしくお願いしますね」 それから彼女は前回と同じようにこちらの予定を気にしながら待ち合わせの場所と時間を提案した 今回は普通の駅前の映画館で問題ないらしい 「急な電話すみませんでした」 「いやいや別にかまわんよ」 低姿勢なのは変わらないな、まぁ変わる必要もないが それから軽く準備をして念のため待ち合わせ時間の1時間前には家を出る とりあえずこの時間なら途中何らかのトラブルがあっても大丈夫だろう 「あれ~キョン君どっか行くの~?」 家を出ようとしたら妹が声をかけてきた 「あぁミヨキチに映画に付き合ってくれないかって言われてな」 「そっか~がんばってね~」 何を頑張れと言うのだ妹よ、それに古泉みたいににやけるな気味が悪い それにしてもこいつの事だから「あたしも行く」とか言いかねないと思ったのだが 言われなくて安心したよ、もし行く事になったら代金は俺持ちになるだろうからな そして自転車を漕ぐ事30分待ち合わせ場所近くの駐輪場に到着 前に自転車を撤去されたことがあったからな、路上駐車はやめることにした そして待ち合わせの場所に歩いていくとミヨキチはすでに到着していた まだ30分も前だというのにいるとはなどうやら俺は待ち合わせに相手より先に着くってことに縁が薄いらしい 「早いねもう来てたのか」 「いえ今来たところです」 とてもじゃないが妹と同級生には見えないな、下手すると朝比奈さんよりも大人に見える 「それじゃちょっと早いが映画館の方に移行か」 「あ、はい」 「今日はなんて映画を見るんだい?」 「あ、×××××ってのが見たいと思ってるんです」 その映画の名前を聞いてちょっと違和感を感じた 何も変な映画だとかそういうのじゃない、普通の映画だ ただ問題なのは普通の映画だからだ、前回のようにPG-12などの規制がかかってるわけでもない このぐらいの年なら普通に見たいと思っておかしくない映画だ、これだと俺をわざわざ誘う必要もない まぁ彼女には彼女なりの理由があるのだろう、詮索はここまでにしていた方がいいな そのあと券を買う際に代金はどちらが払うかと言うことになった 俺が2人分払うと言ったのだが結局はそれぞれ自分の分を自分で払うことになった 全く、別に遠慮する必要はないんだがな しかし久々に映画を見るのもいいものだな、最後に見た映画が文化祭のSOS団の映画だからなお更だ SOS団でもこのぐらいの映画が作れればと思ったが監督が監督だ、まず無理だろうな 映画を見終わって外に出ると空が暗くなりかけていた 本人はいいと言っていたがさすがに一人で返すわけにも行かないので家まで送っていくことにした 送っていくことにしたのはいいのだがなぜかミヨキチはさっきから無言だ チラッと横を見ているとどうやら俯いている、俺なんか悪いことしたか? しばらく歩いていくと見覚えのある人物に出会った 「お、ハルヒじゃないか」 「ん?キョンじゃないの何して…そちらの方は?」 「あぁ妹の同級生のミヨキチだ、今映画を見てきたところだ」 「あらそう、よかったわね。私お使いがあるからもう行くね」 なんだ?ハルヒの奴機嫌が悪そうだったな、何かあったんだろうか 「あのキョンさん今の人は…?」 「あぁ俺が入ってるSOS団っていう団の団長だ」 そういうとミヨキチは何かを考えるそぶりを見せた後 「あの、キョンさん今の方に伝言をお願いできますか?」 「あぁ別にかまわないが知り合いだったのか?」 「いえ、そういう訳ではありませんが『負けません』と伝えてもらえますか?」 「解った伝えておこう」 「それでは私の家はすぐそこですので、今日は本当に有難うございました」 そういうとミヨキチは小走りで自分の家のほうに走っていった 「負けません」か…あいつらなんかの勝負でもしてるのか? 俺には伝言の意味がよく解らなかったが俺に対する伝言じゃないんだ別に問題ないだろう 気が付くと太陽はもう殆ど沈んでおり俺は自転車を家の方向に向けてペダルに力を入れた
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悲劇は唐突に訪れる。 それは、わたしが高校1年、お兄ちゃんが大学3年になった春に起こった。 その日、わたしはわたしの両親、お兄ちゃん、そしてお兄ちゃんの恋人のハルヒさんといっしょに旅行に出かけていた。 最初、お兄ちゃんとハルヒさんのふたりで行く計画だったのだが、わたしがどうしてもついて行きたいと我侭を言ったために、 わたしのお守り役として両親が同伴することになったのだ。 当初、お兄ちゃんはぶつぶつと不満を言っていたが、ハルヒさんを正式に紹介するいい機会だとわたしが説得すると、渋々納得した。 お兄ちゃんは、大学を卒業すれば、すぐにでもハルヒさんと結婚する気でいたようだし、わたしもそのことは薄々感づいていた。 「ああ、この人がわたしのお姉さんになる人なんだなあ」 と、ハルヒさんを見ながらのんきに考えていたのを昨日のことのように思い出す。 わたしはお兄ちゃんのことが好きだった。もちろん恋愛感情という意味ではない。やさしくていつもわたしを守ってくれるヒーローのような存在だった。 でも、ハルヒさんを見ながら、わたしもお兄ちゃんと別れる日が来たんだなあと、少し寂しく感じたりもしていた。 何気ない日常。 それが今ではとても貴重な宝物のように思える。 こんな日常が永遠に続くと思っていたわたしの思いを打ち砕く悲劇が訪れることになる。 突然、前方より大型トラックがわたし達の車に突っ込んできた。 一瞬目の前が暗くなり、恐る恐る目を開けると血まみれのハルヒさんがわたしとお兄ちゃんに覆い被さっていた。 その後のことは気が動転していてよく覚えていない。気がつくと、わたしは病院のベッドで横になっていた。 この事故で、わたしの両親は即死。ハルヒさんは意識不明の重体となったが、わたしとお兄ちゃんは奇跡的に無傷だった。 「ハルヒが、ハルヒが俺達を助けてくれたんだ」 このとき、お兄ちゃんが泣きながら何度もそうつぶやいていたのが、印象に残っている。 わたしとお兄ちゃんは、精密検査をした後、異常なしということで2~3日で退院することになった。 でも、お兄ちゃんは病院に泊まりこみでハルヒさんが目を覚ますのを見守っていた。 ハルヒさんの両親や長門さん、朝比奈さん、古泉さんが心配して帰るように言ったが、お兄ちゃんはずっと付き添っていた。 事故から2週間ぐらいたったころ、ハルヒさんは目を覚ました。その時のことは今でもよく覚えている。 「ハルヒ! 大丈夫か! 俺のことが分かるか!」 お兄ちゃんが必死にそう叫ぶと、ハルヒさんは少し寂しそうな顔をしてお兄ちゃんに微笑みかけた。 「キョン………、あんたなんて顔してんのよ。妹ちゃんが心配してるじゃない」 「ハルヒ………、よかった……」 お兄ちゃんはハルヒさんが意識を取り戻したのを見て、人目もはばからずに涙をポロポロと流した。 病室に安堵感が漂った。ハルヒさんは助かった。このときわたしもそう思った。 しかし、この後ハルヒさんはわたし達の期待を裏切るようなことを言い出した。 「キョン、よく聞いて、あたし達もうお別れよ」 ハルヒさんの言葉を聞いて、周りにいたみんなが驚愕の表情でハルヒさんを眺めた。 引きつった表情でお兄ちゃんがハルヒさんに言葉をかける。 「な、ハルヒ、何言ってんだお前」 「あたしね…、神様に会ったの。そして5分……5分だけあんたに別れを告げることを許してもらったの」 普通ならこんなことを信じるはずも無いが、なぜかその言葉には抗えない力がこもっているように感じた。 「あたしね……、誰よりもあんたのことが好きだった。みんなあたしの我侭に愛想を尽かして、あたしから離れていったけど……、 あんただけはずっとあたしの傍にいてくれた」 ハルヒさんはいまにも消え入りそうな声でお兄ちゃんに話しかける。 「ねえ、覚えてる、あんたの告白の言葉」 「ああ、覚えてるさ! 『ずっと一生お前の傍にいたい』だ! そのときお前はOKしてくれたじゃないか! だから……だから……」 「ふふふ、ごねんね。あんたとの約束、どうやら守れそうにないわ」 「ばかやろう! 団長が嘘ついていいのかよ!」 お兄ちゃんはそう叫びながら、ハルヒさんの手をぎゅっと握り締めた。 ハルヒさんは、すすり泣くお兄ちゃんの方に顔を向けて、静かな声で言った。 「ねえ、キョン。最期にもうひとつだけあたしの我侭を聞いてくれる」 「最期って何だよ! お前の我侭なら何でも聞いてやる! だから最期なんて言うんじゃない!」 「妹ちゃんを悲しませるようなことはしないこと。きっと幸せにしなさい。約束よ。破ったら許さないんだから」 「わかった、約束するよ。だから、お前も早く元気になれ!」 ハルヒさんは、お兄ちゃんの返事を聞くと、やさしく微笑んで、意識を失った。 それと同時にハルヒさんの主治医が病室に入ってきて、わたし達は病室の外に出された。 その夜、ハルヒさんは亡くなった。 ハルヒさんの葬式にはわたしも参列した。娘を失って辛いはずなのにハルヒさんのご両親はわたし達に恨み言ひとつ言わなかった。 そのことが、わたし達兄妹だけが助かったことに後ろめたさを感じていたわたしにとって、多少の救いになった。 警察から事故の原因は運転手の居眠りと説明された。 しかし、運転手には資力が無く、雇い主である会社は違法な営業実態を問われ倒産に追い込まれたため、十分な補償は受けられず、 わたしたちのもとには僅かな額の保険金が支払われたに過ぎなかった。 本当はもっと多くの保険金が支払われるはずだったのかもしれないが、当時のわたし達にはそのことを知る術が無かった。 そして、ハルヒさんの葬式の日を境にお兄ちゃんは変わってしまった。 お兄ちゃんは大学を辞めると、家計を助けるためにと、ほぼ毎日早朝から深夜まで、何かにとりつかれたかのように働きだした。 不景気だったため、雇ってくれるところはなかなか見つからず、派遣労働等の過酷な労働を強いられているのは一目でわかった。 そんなお兄ちゃんの姿を見て 「わたしも高校を辞めて働こうか」 と言うと、お兄ちゃんはやさしくこう言った。 「ばかなことを言うんじゃない。お前は自分の幸せのことだけを考えていればいいんだ。お金のことは全部、俺に任せておけばいい」 「でも、わたしお兄ちゃんのことが心配で……」 「大丈夫だ。俺はそんなにやわじゃない。それにハルヒとの約束もあるしな」 正直、わたしはこの言葉を聞いて、ハルヒさんを恨んだりしたこともあった。 ハルヒさんが最期にあんなことをお兄ちゃんに言わなければ、お兄ちゃんがこんなに苦しむことは無かったのにと。 しかし、お兄ちゃんといっしょに働いている谷口さんの話を聞いて、わたしは自分の認識がいかに自分勝手であったかを痛感した。 あれは、お兄ちゃんのあまりの状況を見るに見かねて、谷口さんからも説得してもらうようにとお願いに行ったときのことだった。 「谷口さんからも説得していただけませんか。仕事を休むようにって」 「ああ、俺もそう言ってるんだが、涼宮との約束だと言って聞かないんだ」 「そんなあ、それで体を壊したら元も子もないじゃないですか。ハルヒさんは勝手過ぎます」 「俺もそう思う。俺もキョンにそう言ったんだ。するとな、キョンはこう言うんだ。 『俺はハルヒに感謝している。もしあのとき、ハルヒがああ言ってくれなかったら、俺はハルヒの後を追って自殺していたかもしれない。 残される妹のことを考えずにな。でも、俺にはまだ守るべき大事な人がいるとハルヒは教えてくれたんだ。だから、ハルヒのことを悪く言うのは止めてくれ』 ってな。正直、この言葉を聞いて俺はキョンを説得できなかったよ」 谷口さんの言葉を聞いてわたしは涙が溢れてきた。 ハルヒさんは最期の死ぬ間際になっても、お兄ちゃんやわたしのことを思ってくれていたんだと、ようやくこのときになって気がついた。 それから、わたしは、お兄ちゃんを安心させるために、一生懸命勉強した。 勉強嫌いだったわたしは、死に物狂いで勉強し、何とか東京大学に合格することができた。 わたしが合格したことをお兄ちゃんに告げると、お兄ちゃんは自分のことのようにとても喜んでくれた。わたしも嬉しかった。 大学に進学できたことだけが嬉しかったわけではない。これでお兄ちゃんの負担を少しでも減らしてあげられると思ったからだ。 しかし、悲劇が再び訪れた。 わたしの引越の準備を終えた夜、お兄ちゃんは突然倒れた。 原因は過労だという。病院に搬送されたとき、お兄ちゃんを診た医師は「いままで立っていたことが不思議だ」と言っていた。 おそらく強い精神力で何とかいままでがんばってきたが、わたしが大学進学を決めたことで緊張の糸が切れ、 蓄積していた疲労が一気に溢れ出したのだろう、というのが医師の見解であった。 お兄ちゃんが入院した病院はハルヒさんが亡くなった病院、そしてお兄ちゃんの寝ているベッドはハルヒさんの使用していたベッドだった。 わたしは予感めいたものを感じていた。お兄ちゃんはこのまま目を覚まさないんじゃないかと。 そんな不安を払拭するために、わたしは徹夜でお兄ちゃんの看病にあたった。 お兄ちゃんが入院して七日目のことだった。わたしは連日の看病に疲れて、病室で眠ってしまっていた。 深夜に目が覚めたため、お兄ちゃんの顔を見ながら、三年前の事故以前にあった様々な出来事を思い出し、物思いに耽っていた。 その日は、なんとなく懐かしい、子供の頃の風景を見ているような、そんな感じがしたのを覚えている。 いままでお兄ちゃんと過ごしてきた色々な思い出が走馬灯のように頭に浮かんでは消えていく。 思い出の中のお兄ちゃんは笑顔だった。 「そういえば最近、お兄ちゃんの笑顔を見たことが無いなあ」 そんな思いが頭をよぎった。 おそらくこのとき、わたしはお兄ちゃんとの別れの時が来たことを、無意識のうちに感じ取っていたのだろう。 突然、病室のドアの向こうに人の気配を感じた。 音も無く病室のドアが開き、女性がひとり病室に入って来た。わたしは入ってきたその人物を見て自分の目を疑った。ハルヒさんだ。 わたしは声をあげようとしたが声が出ず、体も動かなかった。 ハルヒさんがお兄ちゃんのベッドの傍まで来ると、お兄ちゃんはハルヒさんに手を引かれてゆっくりと起き上がり、ベッドから抜け出した。 「待って!」 そう叫んで、わたしはお兄ちゃんのもう片方の腕にしがみつく。 「行かないで! わたしを置いて行かないで! ひとりになるのは嫌! お兄ちゃんを連れて行かないで!」 わたしは、お兄ちゃんの腕にしがみついたまま、必死に叫んで、お兄ちゃんとハルヒさんに訴えた。 お兄ちゃんは、わたしの方を振り向くと、とても悲しそうな、すまなさそうな表情でわたしを見つめてきた。 わたしは、そのお兄ちゃんの顔を見ると、呆然としてしまい、思わず手を離してしまった。 なぜ、わたしはこのとき手を離してしまったのだろう。 いや理由はわかっている。 あの日から、お兄ちゃんはわたしのためにずっと辛い思いをしてきた。そしてわたしはそんなお兄ちゃんの姿を一番身近で見てきた。 もう、わたしのためにお兄ちゃんが苦しむ姿を見たくなかったから。お兄ちゃんはようやく大好きだったハルヒさんの元へ行くことができるのだから。 だから、だからひとりになるのは辛いけど、お兄ちゃんの好きにさせてあげたかった。 わたしが泣きながら笑顔をつくると、お兄ちゃんは少し安心したような表情でわたしに微笑みかけてから、ハルヒさんに手を引かれて病室を出て行った。 病室を出て行くとき、ハルヒさんはわたしのほうを振り返り、とても、とてもやさしく微笑んでくれた。 その微笑は、わたしのこれからの将来への祝福や、わたしのもとからお兄ちゃんを連れ去ることへのすまなさ、 そういった言葉では全て表現できない様々な感情が含まれているような感じがした。 翌朝、目を覚ますとお兄ちゃんは亡くなっていた。 お兄ちゃんの葬式は、お金が無かったため最低限のことしかできず、参列者もいなかった。 ただ、お兄ちゃんといっしょに働いていた谷口さんが線香をあげに来てくれただけだった。 そのときに谷口さんが言った言葉はいまでも覚えている。 「みんな薄情だな。高校のころはSOS団なんていってよくつるんで遊んでいたはずなのに、古泉も長門も朝比奈さんも来ないんじゃあ、キョンも浮かばれないな」 谷口さんは空を見上げながらつぶやくように言った。 「本当の友人ってものは死んじまってはじめてわかるものなんだなあ」 そうやって、わたし達兄妹を見守ってくれた谷口さんも二日後には亡くなった。 派遣先の事業所で安全管理ができていなかったため事故に巻き込まれたのだという。 わたしはいま早朝の駅にいる。 朝早いので人通りは無い。駅からは、高校に通学するために通いなれた道や、お兄ちゃんがSOS団のメンバーとよく行っていた喫茶店が見える。 この景色も今日が見納めだ。もうこの町に戻ってくることは無いだろう。 家は借金と生活費に充てるために売却してしまったし、頼る人もいなくなったこの町には、もうわたしの居場所は無い。 そして、この町に帰ってくる理由も、もう無い。 ただ、わたしはこの町を去るにあたって、ひとつだけ問いたいことがある。 お兄ちゃんは三年間ずっと不幸だったのか? もちろん、わたしと二人で過ごした三年間のお兄ちゃんの境遇はとても悲惨なものだった。 だから、他の第三者が客観的な視点で見れば、おそらく不幸だったと答えるだろう。 では、お兄ちゃんにとって、この三年間は、まったく楽しいことは無く、不幸の連続だったのだろうか。 わたしはそうは思わない。 たまに、数ヶ月に一回程度、わたし達はいっしょに夕食を食べることがあった。 そんなとき、わたしは高校での出来事や将来の夢についてお兄ちゃんと語り合った。 将来、弁護士になってわたし達のような境遇に置かれている弱者を救うんだ、とかそういったたわいない話だ。 でも、そんなわたしの話を聞いてくれるお兄ちゃんの表情は、とてもやさしくて、わたしは好きだった。 わたしは信じたい。この三年間の中にも、きっとお兄ちゃんの安らげる時間があったのだと。そしてそのひとつが、わたしとの憩いのひと時であったと。 幸せとはいったいなんだろう。 わたしはまだその答えを出せないでいる。 でも、わたしは幸せにならなければならない。お兄ちゃんのためにも、ハルヒさんのためにも。 そして天国で待っているお兄ちゃんとハルヒさんに、ふたりのお陰で、わたしがどれだけ幸せだったかを話してあげたい。 そうしなければ、ハルヒさんが身をていしてわたし達をかばってくれた事や、お兄ちゃんのこの三年間の努力が無駄になってしまうから。 ハルヒさんのしたこと、お兄ちゃんのしたことは決して無駄ではなかったと証明したい。 だからわたしは幸せを見つけようと思う。 美しいこの国で ~終わり~
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「いい天気!!!」今日はどうやってキョンに話しかけようかな そこまではいつもの朝だった 「キョン遅いわよ!!」 「はあ!?お前みたいなキチガイに遅いとか言われたくないな、てか話しかけるな」 何言ってるの?聞き間違いよね?ねえ! 「どうしたの?キョンなんか変よ?」 「変なのはお前だろ自己紹介のときに宇宙人とかぬかしてやがったろ、ていうかもう話しかけないでくれ馬鹿がうつる」 「ちょっと!本当にどうしたのよキョン!!キョン!!!」バチーン 「え?」左頬が痛い 「話しかけるなっていってるだろ!!お前なんかさっさといなくなっちまえ!!」 何も言えなくなった どうして?何か悪いことした? 昼休み 「古泉くんならきっとなにか知ってるかも、たしか9組よね」 あ、いた…でもキョンが隣にいる、しかたがない 「古泉くn「でさ、さっきさ後ろの奴が話かけてきやがってよ」 「どんな人でしたっけ?」 「前に宇宙人とか言ってた奴さ」 「ああ、なるほどそれは災難でしたね」 「しつこかったからおもっきりひっぱたいて怒鳴ってやった」 「あなたらしくないですね、まあしかたないと思いますが」「だろ、はいチェックメイト」 これ以上ここにいたくない み、みくるちゃんなら…きっと… 二年生の教室に向かった 「みくるちゃん!!ちょっと聞いてよ!!」 「え?えっえ??あの~どなたですかぁ~?」 「…あたしがわからないの?」 「ごめんなさぁい」 そのときあたしはみくるちゃんの腕を思いっきり引っ張っていた「いたいですぅ~」 「キョンに会えば思い出すわよ!!」お願い一緒にきて そのとき腕を誰かに掴まれた 「ちょいっと待ちなっ!」 「うちのみくるが怯えてるよっ」 「もしかして女の子好きな子かいっ?でも物事には手順てやつがあるんたよっ」「…違う、違うの!!!」 あたしはそこから走り出していた いつの間にか放課後になっていた 「どうして?もう誰もあたしの味方はいないの…」 「WAWAWA~忘れ物~」 「…谷口!!」コイツだけでも 「ちょ、話しかけるなよ!涼宮菌がうつる!!」 「…もう駄目だ」 足早に家に帰った 「…キョン…キョン…どうしたらいいのかわからないよ?」涙がとまらなかった もう明日学校行きたくない………あ!!有希のこと忘れてた!! …でも有希みんなと一緒なのかな… バチーン 自分の顔を叩いた よし、明日有希に会いに行こう 少し気分が晴れたきがした 次の日は雨になった 「今のあたしの心みたい…弱気になったら駄目!!」 「まずは有希に会いに行かなきゃ!」 今日は誰とも話さなかった ひそひそと陰口を言われているのはわかったけど無視した、するしかなかった 放課後部室に向かった 初めて扉をノックした「キョンみたい」 反応がない 「しかたないわね有希だし」 扉を開けた 「有希あたしのことわかる?」 「…」コク 「本当!?」救われた気がした 「ねえ、いったいどうなってるの?キョン、みんなの記憶がなくなってるの」 「…私がした」え?何て言ってるの? 「…この世界は私が望んだ世界」 「どうして!!」有希につかみかかっていた 「…あなたがいると彼が私を見てくれない、だから世界を改変した」 「なっ!!有希!!!」手を振り下ろした 有希に届く前に弾かれた 「どうなってるの?」 「…やはりあなたは邪魔、ここであなたの存在を消しみんなの記憶から消去する」 「え?消す?あたし殺されるの??」 そう言った瞬間光の刃があたしに向かって飛んできていた 「ごめん、キョンあたしもう駄目だ…好き…だったよ」 キィーン 「え?」あたしの前で光の刃が弾きとんだ 「…!!」有希が驚いた顔をしている 「あたし何もしてないわよ」助かったの!? 振り返るとPCが光輝いていた カタカタカタ 何か書き込んである kyon 大丈夫かハルヒ? キョン!?キョンなの!? kyon ああそうだ、いきなりお前が消えちまったから長門に頼んで探してもらってたんだ 有希!?有希ならあたしを殺そうとしてるわよ YUKI.N それは私であって私でない どうなってるのよ!!あたしはどうしらいいの? YUKI.N 強く望んで本当の世界を、あなたならできるはず 望んだからってどうなるのよ! YUKI.N 時間がない私がバリアを張れるのもあと数分、それまでに わからない!!わからないわよ… kyon ハルヒ キョン kyon 頼むお前しか無理なんだ…あのなんだ早く帰ってきてくれお前がいないと…寂しいんだ …キョン kyon こんなときに言うのもなんだが俺はお前のことが世界で一番好きだ、早く戻ってきてくれ! そう書いた後に文字が消えていった 「キョンあたしやってみるよ」 「…もう終わり」 「有希!!!あたしはもとの世界に戻りたい、本音はあなたの存在を消した世界に戻りたい」 「…」 「でも、あなたはSOS団の一人、いなくなることなんて許さないわよ」 あたしは目を瞑った お願い、お願いもとの世界に…優しいキョンのいる世界に… 「…ぉが?」あたしはベッドの上で寝転がっていた 夢?だったの? 時計は4 28分を示していたその後は寝られなかった 「キョン、戻ってるわよね」朝から憂鬱になりながらいつもの坂を登った 「キョン、遅いわよ…」声がでなかった 「悪かったなこれでも早くきたほうだ」 いつものキョンだった 「キョン!キョン!!」思わず抱きついてしまった 「なっ!?おいみんなが見てるだろ」 「朝から見せてくれるね~キョンは、ね谷口」 「教室でいちゃいちゃするなってえの」 「キョンあたし怖い夢を見たの、でも…もう大丈夫よ」 「そうかい、ほら涙拭けよ」 「もう少しでいいからこうさせて」 「やれやれ」 「…好き」「ん?なんか言ったか?」 「なんでもないわよバカキョン!!」 ありがとうキョン 終わり
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1662.html
むかしむかし、ある国の貴族の夫婦の間に一人のかわいいけど頭のイタイ女の子が生まれました。 ハルヒと名付けられたその女の子は様々な武勇伝からいつしかツンデレラと呼ばれるようになったものの、とても美しい娘に育ちました。 ところが浮気症だけど優しいお母さんがエイズで死んでしまいました。 代わりにやってきた継母と二人の連れ子、みくると有希はとても意地悪で、ハルヒは毎日いじめられていました。 人間立場が違うとここまで豹変するのかと、作者はちょっぴりセンチメンタルな気分になりました。 ある日、この国の王子さまがおしろで女あさりのパーティを開くことになりました。 欲張りな有希とみくるは王子をゲットしようとお化粧したり、官能的な衣装を着たりして、ハルヒを一人残してパーティに出かけて行きました。 ハルヒがパーティに行けないイライラをペットの谷口(犬)にあたっているとそこに魔女のちゅるやさんが現れ、 「ハルにゃん、ハルにゃん、泣くのはやめるっさ」と言いました。 「にょろ~ん」とも言いました。 「ハルにゃんをパーティに連れていってあげるよっ スモークチーズを一つ、三毛猫を一匹捕まえるにょろ!」 どうやらちゅるやさんの鼻息が荒いのはデフォルトのようです。 ハルヒが言われた通りスモークチーズと三毛猫を持ってくるとちゅるやさんは長葱をひと振りして呪文を唱えました 「やっつぁっつぁぴゃりやん (ry」 面倒くさいから省略されました。 すると、あら不思議! 三毛猫が猫バスに変身しました――あと、言い忘れましたが三毛猫の名前はシャミセンです。 イライラして名付けました。反省してます。 しかし苦労して作ったスモークチーズはそのままでした。 ハルヒがちゅるやさんに尋ねると、 「これはお夜食にょろ」 ハルヒはシャイニングウィザードをかましました。 ちゅるやさんが長葱をもうひと振りすると、ハルヒはとてもエロティックな衣装と鋼のピンヒールに身を包まれました。シャイニングウィザードの仕返しでした。 「ちょっと、何よこれ!センス無いわね!ドレスとガラスの靴にしてちょうだい!」 ちゅるやさんはしぶしぶハルヒの言うことを聞きました。 長葱をもうひと振りすると今度はきれいなドレスとガラスの靴に身を包まれました。 「そうそう、これよこれ!あんたやればできるじゃない!」 ハルヒがお礼を言うと、ちゅるやさんは、 「スモークチーズをくれたら胸パットも出してあげるよっ」 ハルヒは丁重にお断りし、かねてからの疑問を口にしました、 「いらないわよ! そんなことよりあんた呪文はどうしたのよ?」 「面倒くさいにょろ」 魔女はとても正直者でしたがハルヒにシャイニングウィザード天山キックをかまされました。 「だったらはなっからやるんじゃないわよ中途半端ね!」 猫バスに乗ったハルヒとちゅるやさんはお城とは名ばかりのラブホテルに来ました。 最近ではブティックホテルというらしいのですがその手のことに縁が無い作者に関係の無いことでした。 「ヤる気まんまんってわけね!いいわキョン、この勝負受けてたつわ!」 「ハルにゃん、ハルにゃん、大事なことを言い忘れたにょろ いいかい、ハルにゃん。 十二時くらいになったら魔法が切れてすべて元に戻ってしまうかもしれないにょろ。 そのまえにずらかったほうがいいにょろよ」 ハルヒはちゅるやさんの曖昧な物言いと語尾にイライラしました。 二人が大広間に案内されると、美しいハルヒはすぐに王子役のキョンの目に止まりました。 ですがキョンは隣国の大帝国の王子、古泉に捕まっていました。 いつの世も弱肉強食、この摂理だけは変わりありませんでした。 余談ですがこの頃になると出番の無い有希とみくるは近場のスターバックスで遅めの昼食をとっていました。 キョンの取り巻きの兵隊達はキョンのアナルのピンチにも関わらずニヤニヤと笑っていました。 特に隊長の国木田は物凄く良い笑顔でした。 ハルヒは必殺のドロップキックを古泉におみまいすると、王子様の手を取り時間も忘れて踊りました。 ラブホでしたがあくまでも童話なので本番行為はしませんでした。 悔しそうな全裸の古泉をよそに、幸せそうに踊るハルヒとキョンに周りから祝福の拍手がおこりました。 ですが隊長の国木田だけがニヤニヤと笑っていました。 殺すか? その時、十二時の鐘がヂリリリリーン、ヂリリリリーンと鳴り始めました。電話の呼び鈴のようですがそれ間違いなく鐘の音でした。 ハルヒはちゅるやさんの言葉を思い出し、 「キョン延長しなさい!もちろんあんたの奢りだからね!」 と、広間を走り抜け、階段を駆け降りて行きました。 その時、ハルヒの片方の靴が脱げてしまいました。ちゅるやさんは足を踏み外し、盛大にころげ落ちて大怪我を負ってしまいました。 しょうがないのでハルヒはこれ以降の魔女のシーンにはピカチュウのぬいぐるみを置いて代用することにしました。 ちなみにみくるだけは最後まで入れ替わったことに気付きませんでした。何処までが演技なのでしょうね? さて、ラブホに一人取り残されたキョンはハルヒの落としていったガラスの破片を眺めながらハルヒのことを思い続けました。そして執事の新川に、 「あの姫こそ、俺の探していた花嫁d (ry」 原作通りのことしか言わないので省略されました。 キョンとその家来達は国中を訪ねて歩きましたが、ガラスの靴をはける娘は一人もいませんでした。 そして最後にハルヒの家にやってきました。みくると有希はなんとか靴をはこうとしましたが、いくら足を押し込んでもはけませんでした。 有希があんまり熱心に足をねじ込んだためにガラスの靴は壊れてしまいました。 キョンは慌てて三代目のガラスの靴を買いに行きましたが何故か自腹でした。 そしてキョンは何故かお尻をさすっていました。キョンの身に一体何が!? それはディレクターカット版で明らかになるのでそちらも是非購入してくださいっス。お願いしまっス。 その時掃除を終えたハルヒが部屋に入ってきました。みくるは必死で遮ろうとしました。 何故ならキョンと有希がキスをしてたからです。 どちらかというと有希が無理矢理キョンの唇を奪ったのですがそんな言い訳ハルヒには通用しません。 怒ったハルヒは世界を滅ぼしてしまうほど危険だからです。 焦った新川は迷わずに言いました。 「どうぞ、はいてみてください」渋い演技にお茶の間の奥様方もメロメロです。 ちなみにハルヒの足はぴったりと靴におさまりました。 「おお、この方こそ王子様の探していた花嫁に違いない!」 新川は声を張り上げ、みくるや有希も拍手で二人を祝福しました、 「お、おめでとうございますツンデレラ。今までいじめててごめんね」 「………」 立場が逆転したとたんに手の平返したように態度を変えるみくるにハルヒは不信感を感じましたが悪い気はしなかったので素直に祝福されました。 「ふん!エロキョンあんた今月一杯昼飯奢りだからね!」 ハルヒが隣の大帝国を打ち滅ぼし国に帰ってくるとそこにキョンの姿はありませんでした。 キョンはまるでハルヒから逃げるようにして妹とフェードアウトしてしまったのです。 主のいなくなった国はやがて衰退し滅びましたがキョンと妹いつまでも禁断を愛を深め、いつまでも、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。 めでたし めでたし
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【仮説3】その2 瓦礫の山を乗り越えつつ俺たちは歩いた。途中で何度も道に迷い、一時間くらい歩いただろうか。いいかげん疲れて、前を行く朝比奈さんにまだ着かないんですかと聞こうとしたところ、後ろから声をかけられた。 「おいそこの三人、止まれ。両手を上げろ」 俺たちはゆっくりと手を頭の上に上げた。 「その声は新川さんじゃないですか」 「な、なんで分かった」 やっぱり。迷彩服でバンダナを頭に巻いて片メガネしてりゃ誰でも分かりますって。一度襲撃されてるし。 「そちらは朝比奈さんですか。なんでこんなやつらと一緒にいらっしゃるのですか」 「ええと、わたしはあなたの知ってる朝比奈みくるではないんです。こっちにもう一人のわたしがいるはずなんですけど」 「どういうことでしょうか」 長門の姿を見て新川さんの表情が気色ばんだ。肩から下げたマシンガンのグリップを握り締めている。そのとき別の声が聞こえた。 「新川さん、待って」 物陰からもう一人の朝比奈さんが出てきた。俺の朝比奈さんと寸分違わず、まったく年を取っていなかった。朝比奈さん、あなたいったいどの時代から来たんですか。 「朝比奈さん、やっと会えました」 「キョンくん、お久しぶり」 紛らわしいのでこの人は朝比奈さん(特大)と呼ぶことにしようか。いや、あらゆるサイズは同じなんだが。特大のほうはOLっぽい服装ではなく、くすんだ緑色のよれよれの軍服っぽいものを着ていた。脇に銃のホルスターらしきものを下げている。 「朝比奈さんってサバイバルゲームやるんですか」 「うふふ、ゲームでも訓練でもないわ。わたしはこれでも少佐なのよ」 なるほど。今後は朝比奈少佐と呼ぶことにしよう。 少佐のほうの朝比奈さんが俺の朝比奈さんに聞いた。 「あなたはどの時代から来たの?」 「時代というより別の時間線から来たの。わたしの時間平面にはこの歴史はないわ」 「そんな、時間って一直線じゃなかったの?」 「それが涼宮さんの時間移動技術のせいで分岐がはじまったらしいのよ」 「なんてこと……」 「お二人とも、ここでは敵に見つかるかもしれません。ともかく中へ」 新川さんが割って入った。俺たちは瓦礫の山をしばらく進んで、どうも見覚えのある場所に立った。かつてなにかの和風建築だったらしいもののなかに入り、急な階段を降りていった。降りてゆく途中、ところどころに電球が下がっていたが呼吸するように明るくなったり暗くなったりしていた。階段の底のほうから湿った冷たい空気が流れてくる。しばらくして最下層らしい場所にたどり着いたが、そこからもまだ暗くて長い通路が続いていた。壁はいちおうセメントが貼ってあるらしかったが今にも崩れそうだ。足元をちょろちょろと水が流れている。ときどきネズミみたいな黒い陰が小走りに逃げていく。 俺は朝比奈少佐に小声で聞いた。 「どこに続いてるんですかこの道は」 「この先にわたしたちの居住区があるわ。ここは元々は第二次大戦より前に掘られたもので、それを拡張したらしいの」 そんな隠し施設があったとは、もしかして旧日本軍の地下基地とかじゃ。 ドアを開けると目を刺すような光に照らされた部屋があった。俺は手をかざして部屋の様子をうかがった。そこは古い造りらしく、壁には白い漆喰が塗ってあり、低い天井から裸電球が下がっていた。やっぱり旧日本軍の秘密施設ってのが似合って気がする アサルトライフルを持った数名が俺の顔を見るなり銃を構えた。ここじゃ俺ってそんなに悪者だったのか。 「みんな落ち着いて、この人は彼本人じゃないの」 朝比奈少佐に銃を下ろすように言われても、なかなか信じようとはしなかった。俺は身体検査を受けてやっと信用されたようだが、長門はそうはいかなかった。 長門が口を開こうとすると銃口が長門を取り囲んだ。こいつらはやたらビクビクしている。そりゃそうだろう、長門にはどんな武器も通用しないだろうからな。というより、ここまで神経質になるのは長門の実力を少しでも垣間見たことがあるからか。 「少佐、そいつは信用できません」 振り向くと、そこにいたのは森さんだった。 「森さんじゃないですか。お久しぶりです」 森さんは俺の目を見ようとはせず、フンと顔を背けた。その態度はあんまりだなぁ、俺あなたのファンだったのに。国木田がいたら悲しみますよ。 「世界を壊滅させたのはそいつだという話を聞いていますから」 「それはただの噂だ。銃を下ろせ」 朝比奈少佐が命令口調で言ったが森さんは応じようとはしなかった。どうやら階級は朝比奈さんより下らしい。 「できません」 「しょうがないわね。大佐を呼んで、過去から友達が見えた、と」 「分かりました」 大佐とやらがなかなか現れないので俺は朝比奈少佐に尋ねた。 「朝比奈さん、どうなってるんです?」 「ごめんね、ここは機関の本部なの。神経質なのはそのせい」 「この時代の機関ってなにしてるんですか。レジスタンスとか聞きましたが」 「政府軍と戦ってるの。聞いてないかしら?涼宮さんを含む勢力と戦っているって」 「ええ、チラとは聞いてますが。この時代の俺ってなにしてるんですか」 「敵の本拠地にいるわ。軍の研究施設にいるはず」 「なんの研究施設ですか。バイオ兵器ですかロボットですか」 「時間移動技術を軍事利用する研究をしてるのよ」 それでこの待遇だったわけだ。この時代の俺は敵も敵、参謀本部くらいのところにいるじゃないか。 「実は俺たち、」 森さん一味に襲撃されたんです、と言おうとしたら長門に止められた。 「……それはまだ未来の情報。言わないほうがいい」 そうか。ということはこれから襲撃に行くということか。どうも時系列が混乱しているようだ。 「大佐がお見えです」 森さんがそう言ったが、誰も構えた銃を下ろそうとはしなかった。軍隊式の敬礼がないのはレジスタンスだからか。 大佐と呼ばれた小柄なやつが歩いてきた。昔米軍が砂漠で着てたグレーの迷彩っぽい軍服を着て、帽子を目深に被っている。帽子のひさしをひょいと上げた。 「あれれ、キョンくんと長門っちじゃないか。これまたお若いっ。そっちにいるのはみちるちゃんかいっ」 俺にとってはこないだ会ったばかりだが、なつかしの鶴屋さんがそこにいた。重たいブーツを履いた将校の野戦服スタイルだが、長い髪をサラリと背中に垂らしてチャームポイントの八重歯も変わらずにいる。あれから十年は経っているはずだが、この人は年を取らない顔だよな。 「あれ、鶴屋さん。じゃあこの上にあったのはもしかして元鶴屋さんちですか」 「えへへっ。戦争でぶっこわれちゃってね。あの入り口はうちにあった倉さ」 「そうだったんですか。それはそうと、会社の件ではいろいろとお世話になりました」 「固いことは抜き抜き。ふーむ、それにしても元気そうだねぇ」 鶴屋さんは俺と長門をジロジロと見た。 「あたしはてっきりキョンくんはハルにゃんとくっつくのかと思っていたよ」 またまたご冗談を。若かりし頃、未来人か宇宙人かどっちか決めろって言ったのはほかならぬ鶴屋さんですよ。 「あはっ、そんなこと言ったっけね。長門っちもシアワセそうであたしゃ嬉しいさ、いよっご両人」 「……」 長門は少しはにかんでいるのか、俺の袖を指二本でつかんだ。 「鶴屋さんはまだ独身なんですか」 「こんなご時世じゃねえ、とてもお付き合いなんて無理さあ」 「時間移動技術のせいでいろいろあったと聞いてます。内戦とか核戦争とか」 「タイムマシンに投資したのは、うっとこのグループだからね。あたしにも責任はあるのさ」 「今は地下活動ですか」 「まあ簡単にいうと政府と結託したハルにゃんと戦ってるってわけさね。まっ、立ち話もなんだから入った入った」 鶴屋さんに背中を押されて通路を進んだ。壁にはあちこちひびが入っていまにも崩れそうな具合だ。通路は迷路のように入り組んでいた。突き当たりのドアを開けると、こぎれいな和室があった。いつぞやお邪魔した鶴屋邸の離れに似ている。 「秘密基地に畳ですか」 「わははっ、これだけは譲れなくてね。死ぬときは畳の上って決めてるんさ」 なんだか急に年寄りくさいことを言い出す鶴屋さんは、案外本気なのかもしれないと思った。 畳の上に正座して待っていると、朝比奈少佐がお茶を運んできた。緑茶のいい匂いが漂う。 「みんな、味わって飲むんだよ。みくるの入れるお茶なんて、滅多に飲めないからさ」 戦争のせいで緑茶はもう贅沢品になってしまったらしい。なんてことだ。 「あれからなにがあったのか、かいつまんで話すよ」 ── 鶴屋さんと朝比奈少佐の話をまとめると、次のようになる。 ハルヒがタイムマシンのプロトタイプを開発し、それを鶴屋さんが親に教えた。親父さんが実験を見に来てこれは世紀の発明だと方々に宣伝してまわった。親父さんには政治家のつてもあって、政府のお役人が見に来た。 最初は、これは科学の発展に大いに貢献する技術だから、助成金を出そうという誘いだった。文部科学省、総務省、防衛省、あと得体の知れない連中がそろってやってきた。ハルヒは得意満面な笑顔で承諾した。ところがすでにこのとき、裏では技術を掌握するための陰謀が動いていたのである。 助成金をもらっている手前、研究結果は逐一報告しなければならない。防衛省が噛んでいる手前、守秘義務という猿ぐつわをかまされることになった。話を聞きつけて海外から諜報組織が紛れ込むようになった。政府はこの技術を使って国際的に優位な地位を獲得しようと企んだ。そこで研究施設の本拠地を防衛省特務機関に移す話が出て、鶴屋さんと親父さんは反対した。 それから政界からの鶴屋グループへの圧力がはじまった。取引先が撤退し、銀行から融資を断られ、グループの役員が法人税の脱税やらインサイダー取引やら曖昧な罪状でしょっぴかれた。親父さんは失踪、一族は離散し、残ったのは一人娘だけとなった。 鶴屋グループの傘下で、世間に知られていない組織がひとつだけ残っていた。機関である。身寄りを失った鶴屋さんを見かねて、機関が助け舟を出した。そして名前を変え、素性を隠した鶴屋さんは世間から消えた。 やがて日本は、歴史を書き換えられることを危惧した隣国から攻撃を受け、NATOや日米安保条約を巻き込んだ戦争に発展した。政府主導の元で研究を続けていたハルヒ達は、戦時宣言のもとに軍組織に取り込まれた。 長引く戦争で国の経済が衰えた頃、それまで鳴りを潜めていた機関が活動を再開した。目的はハルヒの時間移動技術の破壊だった。 朝比奈少佐は時間の流れを元に戻すために未来からこの時代に訪れたが、既定事項が崩れたためにTPDDを失って未来には帰れなくなった。機関の協力を得てSTC理論とTPDDをこの時代で作ることにした。その中心人物であるハカセくんは今、スイスの研究施設に避難している。 「、というわけなのさ」 「古泉は今どうしてるんです?」 「古泉くんは涼宮さんと一緒にいるわ。一度、なにか約束したらしいの。SOS団の味方をするって」 あれか、雪山の洋館での約束がアダになったのか。あるいは自らハルヒの味方をすることを選んだか。あいつはあれで人情に動かされるところがあるからな。 「ハカセくんとみくるの時間移動技術が完成すれば先手を打てるんだけど、長門っちが向こうにいるかぎりなかなか手が出せなくてね」 そりゃそうだろう。こいつだけは敵に回したくない。 「この長門っちが加勢してくれると随分と助かるんだけどねえ」 鶴屋さんはすがるような目を長門に向けた。 「……できることはしたい。でも、状況を見定めたい」 「うんうん、そうだよねっ。無理強いはしないさ、なんせあたしたちは自由の戦士だかんね」 一族企業お取り潰しになっても、財産を失って帰る家がなくなっても鶴屋さんは強かった。大正デモクラシーにこんな人が生まれていたら、もしかしたら日本はいい方向に変わっていたかもしれない。 「鶴屋さん、俺ハルヒと話してみようと思うんです。あいつが私利私欲のためにこんなことをはじめたとは思えないし」 「それもそうだね。それが公正な判断ってもんだね」 「それにこの時代の俺がなにを考えているのか、不可解なところもあるんで」 「今のキョンくんとは会ったよ。彼には彼の考えがあるみたいで、どうもあたしとはソリが合わないんだけどね」 「三十億人も死んだってのに、俺はなに考えてんでしょうねまったく」 「今じゃもう、なにが正しいのかもわかんないさ。ともかく会ってみるといいよ」 俺は長門と朝比奈さんを置いていくことにした。こういう事態だ、二人にもしものことがあっては困る。それにこっちの長門を連れて行くと向こうも過剰に反応するだろう。 「長門、こっちの人たちを助けてやってくれ」 「……分かった」 「キョンくん、必ず帰ってきてね」 二人の朝比奈さんが涙ぐんでいた。大丈夫ですよ。俺は滅多なことじゃ死にませんから。 隠れ家の出口まで鶴屋さんが送ってくれた。 「キョンくん」 「なんでしょう」 「世界がこんなになったのは、たぶんみんなが悪いんだよ。キョンくんやハルにゃんだけじゃない。このままいけばどうなるかって分かっていたのに、誰も止めなかったからさ。あたしもね」 はじめて見る鶴屋さんの悲しそうな顔だった。これからよくなりますよ、とも、俺がなんとかしますよ、とも、俺には答えようがなかった。自分たちがやったことに、みんながツケを払っている。そう思えてならなかった。 鶴屋さんに教えられた方角をひたすら歩いた。道と呼べるものはなく、人が歩いた形跡のあるところを探しながらたどった。たまに途切れて道を見失い、顔を上げると延々瓦礫の山が続いていた。 このあたりは確か東中があったはずだ。グラウンドもフェンスも跡形すらない。瓦礫の間に草が生えているところがあるのは、もしかしたらグラウンドの名残の空き地か。折れた電柱らしきものをたどって、俺は北を目指した。道らしいものは線路の跡地だろうか。もちろんレールはないが、枕木とバラストの石が無数に散らばっている。 歩いてゆくと道は途絶えた。たぶんここが光陽園駅にちがいない。見上げると山だけは残っていた。緑はなく、土が剥き出しで茶色に禿げた丘になっていた。 道が終わったところにある瓦礫の山の上から見回すと、離れたところに少しだけ広くなった場所があった。そこに長門は座っていた。忘れることがあろうか。高校一年の五月に長門に呼び出されたのがこのベンチ。朝比奈さんとタイムトラベルをしてハルヒの校庭落書きを手伝うことになったのもこのベンチ。戦災で町が再起不能になるまで荒廃したありさまで、この長椅子だけが残ったのはなぜだろうか。 「よう、待たせたな」 「……」 「このベンチ、残ってたんだな。お前が保全してたのか」 「……そう」 言葉が継げない。いつもの俺なら二人の会話はそれなりに続いて、長門から感情を引き出すのにそれほど苦労はしないんだが。この長門は未来の長門であって、今俺といる長門ではない、そんな感情移入を阻むなにかが俺の中にあった。 「長門、教えてくれ。観察するだけで干渉しなかったってのは本当は嘘だろ」 「……そう」 長門は俺の目を見ず、コクリとうなずいた。俺は長門の答えを待っていた。ほこりにまみれた風が二人の前を吹きぬけた。 「……あなたを、失いたくなかった」 長門はおずおずと自分の手を俺の左手の上に重ねた。俺はその手を取って長門を抱きすくめた。ベンチの上でやや腰をひねり気味にしながら、長門は俺の耳元で小さな溜息をついた。 「……」 「お前らしくない」 自分を見失うなんてこいつにはあってはいけない。こいつは俺たちが道を踏み外さないかといつも後ろで見守ってくれている存在のはずなんだ。 「この時代の俺とはうまくいってないのか」 「……微妙」 こういう時代だから、仲むずまじく暮らすってのは無理があるかもしれんな。 しばらくして長門は手を解いた。長門が立ち上がると俺もそうした。 「……こっち」 長門はどこか瓦礫の山の向こうを指した。そう、俺はハルヒに会いに来たんだ。 長門は元公園だった敷地を出て、坂道を登り始めた。道と呼べるものはなく暗くて分かりづらかったが、長門のマンションの残骸らしきものがあった。もう、あの長門空間は存在しないのか。 元玄関だった石の塊を乗り越えて、ストーンヘンジの片割れのような石がひとつだけポツンと立っているのが見えた。二人はその前に立った。長門が石の表面に触れると、石のまんなかがスゥと消え小さな空間が生まれた。 「……入って」 「これ、もしかして昔のエレベータか」 「……そう」 こんな石と化したエレベータでなにをするつもりなんだろうといぶかしんだが、ガクンと音がして箱が降りていくのを感じた。もしかしてこのマンション、地下があるのか。軍の施設にしちゃ、えらく地味な入り口だな。衛兵もいない。 「……ここは秘密の通路。わたし以外通れない」 三十秒ほどしてドアが開くと、そこから長い廊下が続いていた。固く冷たい灰色の壁に緑色の床が長く伸びている。歩いていくとところどころで監視カメラに睨まれた。 「かなり深いのか」 「……地下二百メートル」 「奥にはなにがあるんだ?」 長門は金属製のドアの前で立ち止まり、なにかを言い淀み、それを開けた。 長門が見せた空間はドーム球場くらいはありそうな大規模な研究施設だった。政府機関だけあってかなりの額をつぎ込んだと見える。高い天井から下がったいくつもの水銀灯、何台ものパソコンと大型モニタ、白衣を来た大勢のスタッフ、ライフルを抱えた何人もの衛兵、車輪がない車のようなものは移動装置か。厚いガラスで仕切られた向こうの部屋に見えるカーブしたパイプは加速器の一部か。 キャットウォークを通ると、ところどころにいる衛兵が直立不動の気をつけをして敬礼した。長門の階級はけっこう上らしい。俺はそれを見て感心しつつ長門の後ろをついていったが、どうやらこいつらは俺にも敬礼しているらしいのである。 パイプがいくつも並んだ、ボイラー室か発電施設みたいな場所を抜け、さらに銃器やロボット兵器のようなものが並んだ倉庫を抜け、将校だけが使う豪華なラウンジのような場所に着いた。そこには俺がいた。ハルヒもいた。三十歳は越えてるはずだが、見た目はたいして変わりなかった。 「お前か、じゃなくて俺か」 マヌケなことを言ってしまった。ハルヒはその辺にいた軍服のやつらに顎をしゃくって外に出ろという仕草をした。すげー偉そうじゃん。こいつも海軍っぽい軍シャツを着ている。事務屋の制服ってやつだろう。肩の階級章には横線二本と星が三個ついていた。その隣にいた俺は横線二本に星が一個、ここでもやっぱ平だな。 「来るなら連絡くらい入れろよな。俺が二人もいたら騒動になる」 どうやってだ携帯でかよと突っ込みを入れるのを忘れるほど、俺は圧倒されていた。予想外の展開にだ。俺が軍将校に?ハルヒも?いつだったか海軍将校一種軍服でコスプレさせられたときより衝撃を受けた。 「キョン、やっぱ若いわね」 ハルヒが笑っていたが、なぜかやたらむかついた。いつものスーツじゃなくて軍服だからか。 「教えてもらおう」 俺は精一杯の虚栄を張ってすごんだ、つもりだった。 「まあそうしゃっちょこばるなよ。一杯飲め」 缶ビールを渡され、椅子を勧められたが俺は座らなかった。 「ああ、これのせいか」 俺(大)はシャツの階級章にチラと触れた。 「軍ってのは一種の生活共同体みたいなもんだ。外から見りゃ殺人集団みたいなもんかもしれんが、中に入れば居心地はいいもんさ。ここで結婚式もやってくれるし産婦人科の病院もあるし、死ねば葬式だってやってくれる」 「だからなんだ」 「俺は格好こそ兵隊だが、鉄砲なんざ撃ったことは一度もないってこった」 「じゃあそのホルスターに突っ込んであるのは水鉄砲か」 「本物に決まってるだろ。お前はなにをカッカしてんだ?」 「そうよキョン、じゃなくて若いキョン、ここにいれば食べるのも住むのも困ることはないわ。好きなこともやれるしね」 そうじゃねえだろ、俺たちの会社はそんなことのために作ったわけじゃねえだろ、と言いたかったのだが、言葉にならずにコブシを握り締めるばかりだった。 「お前ら、外がどうなってるか知ってるよな」 「知ってるわ。タイムマシンがきっかけだったってことも知ってるわ」 「お前ならどんな願望でも実現できたのに、なんでよりにもよってこんな政府のお乳にすがって生きるようなマネをしちまったんだ」 「仕方ないでしょ。時代の流れに飲み込まれないで生きていくためにはしょうがなかったのよ。鶴屋グループがどうなったか知らないの?」 「それは聞いたが、しかしだな」 やり場のない怒りにかられてスチールのテーブルをドンと叩いた。俺(大)が俺を抑えた。 「まあそう怒るな。もし政府と手を組まなかったら俺たちは今ごろ消されてる」 「長門と古泉がいりゃなんとかなったはずだろ」 「あの頃の俺たちは無力な零細企業にすぎん。なあ、小さなノミが自分よりでかいバケモンに飲み込まれようとしたとしたら、どうすると思う」 「なに言ってんだお前は」 「背中に乗って毛に隠れて生き延びるしかない」 「それが三十億を殺したやつが言うことなのか」 「俺たちが殺したわけじゃない。時間移動技術はいずれは誰かが完成させた。たまたま俺たちが完成させただけで、最初からこんな展開になるとは思っていなかったさ。車だってそうだろ。家族で休日を過ごすシアワセのワンボックスカーも、軍用になって大砲を積めば人を殺す道具さ」 「バカだろお前。外で人がバタバタ死んでるってのになんだよこれは。のんびりビールなんか飲んで地下でご隠居生活か」 俺は缶ビールを投げつけた。やつは避けて、缶は壁にあたって転がっていった。 「お前は過去から見てるからそう思うだけだ。時間が経てば同じように考えるさ」 俺ってやつはいつのまにこんなバカになっちまったんだ。俺にはこいつがハルヒの能力を使って野心を叶えたとしか思えん。これでは長門が不憫すぎる。 俺はふつふつとたぎる怒りを抑えて真顔に戻した。 「ちょっと二人だけで話したいことがあるんだが」 「なんだ?」 「外で話そう」 俺は親指で廊下のドアを示した。後ろからついてくることを背中で感じて俺は先に出た。廊下には俺たち以外はいない。俺はドアをロックした。 「話ってハルヒのことか」 俺たちにはいくつもの秘密があって、こういう内緒話はたいていハルヒの能力に関わることだが、別にそういう話をしたいわけではない。俺はいきなり腹にボディブロウをかました。腹をおさえてうんうん唸っている俺(大)を尻目にセキュリティカードを取り上げドアを開けた。あいかわらず人を信じやすい性質だ。 俺は部屋に戻るなりハルヒに向かって叫んだ。 「ハルヒ、お前に言ってなかったことがある!」 「な、なによいきなり」 「実は俺はジョ……」 さっと影が動き、長門の冷たい手が俺の口を塞いだ。 「……それを言ってはだめ」 「な、長門」 「……おねがい、言わないで」 長門の目は潤んでいた。俺には分かっていた。これを言えばすべてが終わる。前回とは規模も範囲も違う情報爆発が起こる。次元断層が生まれ俺たちは存在しなくなる。 「……その名前を言ってしまうと、わたしたちの関係は終わってしまう」 俺は思った。これはもう長門の、情報統合思念体の手に負えない事態になってしまったんじゃないかと。ハルヒがはじめた時間移動技術は、たぶん世界中の誰もが欲しがるシロモノで、もちろん政府も軍もその中にいた。各国の思惑が金と権力と政治を動かし、それからドロドロしたなにかが交錯して俺たちはその渦に巻き込まれてもがいた。海流が逆巻く渦に飲み込まれた小さなボートは、沈まずに生きていくために大きな流れに乗るしかなかった。 もしかしたら人類はこれを手にしてはいけなかったのかもしれない。過去は忘れ去られるべきだった、未来は夢の中で見るべきだった、と。 ドアをドンドンと叩く音がした。まずいな。俺は拘束されるか、よくてぶん殴られるかだろう。衛兵がドアを開けると俺(大)が顔を真っ赤にして怒っていた。 「そいつをつまみだせ!」 自分に怒鳴られてもいっこうに動じないのは自分ってものを知っている余裕からか。 「ここは軍の施設だぞ。俺が命令すればお前は消されちまうんだぞ、分かってんのか」 「いいさ、こんな未来はクソくらえだ。俺が消されたらお前も道連れだからな」 ハッとしたようだった。まあ、時間の概念がよく分かってないのは相変わらずとみえる。 俺(大)は殴りかかろうとするところをドウドウと抑えられ鼻息を荒くしていた。長門が見ている手前、手を出せないんだろう。そいつに冷ややかな視線を送りつけながら、俺は長門に連れられて、来た道を出口に向かった。こんな時代来るんじゃなかった。地球を破滅させやがって、どいつもこいつもアホだらけだ。谷口のほうがまだましだ。 「ここでいいよ」 俺は公園のベンチの前で別れを告げた。 「……そう。気をつけて」 「お前も元気でな」 「……あなたは、やるべきことをやって」 この長門には分かっていたのだ。俺が歴史を書き換えるためにここに来たことを。そして書き換えた結果、今の自分が消えてしまうことを。こんな不幸の影を背負った長門は見たくなかったが、だからといって消えてしまっていいわけじゃない。なぜだか長門の姿がぼんやりとしか見えない。 俺はベンチを後にした。長門はいつまでもそこから動かず、去っていく俺をじっと見ていた。あの頃は楽しかった、そう言いたかったにちがいない。 夜道、瓦礫の山をいくつも超え、おぼろげながら道らしいものを辿った。月の光がなかったら迷っていただろう。俺の時代なら長門マンションから三十分もかからないはずなのだが、この瓦礫を登っては降りてを繰り返して一時間以上かかった気がする。着ていた服も顔もホコリにまみれて、機関の基地にたどり着いたのは月がだいぶ傾いてからだった。 「……おかえり」 隠しドアの前に、俺の長門が待っていた。 「長門……」 その姿を見てほっとした俺の目から熱い液体がぽろぽろとこぼれ落ち、視界がぼんやりと見えなくなった。この時代の長門の身に起ったこと、そして俺がこれからやろうとしていることが頭の中をぐるぐる駆け巡る。俺は手探りで長門の肩を引き寄せ、力いっぱい抱きしめ、嗚咽して泣いた。たぶん十年ぶりくらいに泣いた。 水の出が悪い洗面台で顔をごしごしと洗いながら、軍施設でシャワーを借りればよかったなどという甘い考えを振り払った。長門からタオルを受け取った。つい数分前に長門の前でオイオイと泣いてしまったのを思い出して少し赤面した。 「長門、この歴史は変えないといかん。どうしてもな」 だが、俺がこれをやろうとしていることをこの時代の俺は知っているわけで、それを出し抜こうとしていることをまた知っているわけで、その上を行こうとしていることも、ああっ無駄にややこしい。ひさびさに言ったなこれ。 「長門、頼みがあるんだが」 「……なに」 「これが終わったら俺のここでの記憶を消してくれ。未来の俺に情報を残さないために」 「……分かった」 今回ばかりは仕方あるまい。未来の自分と戦うにはそれしか有利になる方法がない。 俺は朝比奈さんと朝比奈少佐を呼んだ。おそらくはここが、森さん一味が俺たちの会社を襲撃する流れのスタート地点になるのだろう。 「朝比奈少佐。不本意ながらこの歴史を書き換えてほしいんです」 「ええ。それにはわたしも賛成ですけど、どうやったらできるのかしら」 「十年前に戻ってタイムマシンの開発を阻止してもらえませんか」 「キョンくんが戻って阻止するわけにはいかないの?」 「ええっと、実はこの組織のメンバーが阻止することが既定事項なんです。俺たちが阻止してしまうと俺たちがこの時代に来る理由がなくなってしまうんで」 「でもわたしのTPDDはまだ戻らないし、ハカセくんのほうも進展がないし」 「俺たちの朝比奈さんがいます。TPDDをコピーするなりSTC理論を渡すなりできませんか」 「それは無理だと思うわ」 「なぜです?」 「TPDDってふつうの理論と違って、言葉で伝えられる技術じゃないのよ」 俺の朝比奈さんもうなずいた。どっちが話してるのか俺も混乱気味なのだが我慢してくれ。 「そうなの。この理論は論文とかテクノロジーだけじゃないの。言葉にはできない概念というべきか」 「……わたしが、手伝う」 二人が長門を見つめた。こいつならなんとかできるかもしれないな。今までずっとなんとかしてくれてきた。だがどうやって? 「……言語を伴わない概念の伝達は、一度試みた」 「ああ、それってもしかして、ルソーからシャミセンに生命体を移したときか」 「そう。あの情報生命素子の構造はDNAなどの言語ではなく、概念に近いものだった」 あのとき巫女さんだった朝比奈さんは考え込んでいた。 「やってみる価値はあるわね」 「そうね」 「……セッティングをして」 「分かった。任せろ」 俺は鶴屋さんを呼んだ。 「ほいほい、なんだいキョンくん?」 「朝比奈少佐にTPDDを復活させたいんです。手を貸してもらえませんか」 「へえええ、そんなことできるのかい?」 「長門の技術で俺たちの朝比奈さんから転送できそうなんです」 「おぉ!その手があったんだね、みちるちゃんも役に立つじゃないか。けへへっ」 どうも朝比奈みちるさんにこだわってるようだなこの人は。あのとき本当のことを教えなかったからスネてるのかな。 「じゃあみくるが時間移動できるようになるんだね。こっちの切り札になるね」 「残念なんですが、この歴史は書き換えないといけません」 「え……」 「ハルヒのタイムマシン開発を阻止してほしいんです。詳しくは言えないんですが、機関の人にやってもらいたいんです」 「そんなことしたら、そんなことしたら……この世界が消えちゃうんじゃないのかな」 鶴屋さんの声は消え入りそうだった。そう、この世界は消えなければいけない。俺のエゴだということは分かっている。腹が立ってこの時代の俺をぶん殴った俺だったが、三十億どころかこの世界の全員を消してしまうということで、もしかしたら俺のほうが背負えないくらいの罪を被ることになるのかもしれない。どんな状況にせよみんながそこで生きている。はじめから存在しなくてもよかった世界など、どこにもありはしないのだ。 「長門っちに頼んで今のハルにゃんの施設をぶっ壊してくれるだけじゃだめなのかい?」 「そうすると二人の長門が戦うことになります。前にも似たようなことがあって、それは避けたいんです」 「そうだったのかい……」 「鶴屋さんごめんなさい。歴史の根本から変えるしか方法がありません」 「そう……そうだよね。こんな世界、最初からなかったほうがいいのさ」 「ごめんなさい」 「まあまあ、そんなに卑屈になることはないさ。もしかしたら別の世界に存在してるかもしれないじゃないか」 存在とはなんなのか、時間とはなんなのか、俺にはとても説明できない。人間ごときの俺には、肯定も否定もできなかった。 和室の照明をぼんやりとした暖色系にしてもらい、座布団を三枚用意してもらった。ルソーのときは香を焚いてもらったが、そんなものはとっくの昔に消滅している。せめて落ち着けるようにとお茶を点ててもらった。長門用に巫女さんのコスプレ衣装でもあればよかったのだろうが、当然そんなものは残っていない。 二人の朝比奈さんは対面して座り、その横に長門が立った。長門は二人の両手を互いに握らせ、自分の手をそれぞれの頭の上に置いた。 「……目を、閉じて」 二人は目を閉じた。長門はぶつぶつと、いつもより長い呪文を唱えた。長門の目はどこか遠く宙をさまよっていて、焦点が合っていない。STC理論を読んでいるのだろうか。 十五分ほどして長門は手を離した。 「……終わった」 朝比奈少佐が目を閉じたまま右手をこめかみに当てていた。 「戻ったみたいですね。なんだか前とは違う感じがするけど」 「……いくつか修正を施した。十五パーセント程度の効率は上がったはず」 「ええっ、ほんとですか。ありがとうございます」 「よかったわねぇ」 朝比奈少佐と朝比奈さんは抱き合った。こうしてみると双子の姉妹みたいだな。 俺は部屋の外にいた鶴屋さんを中に引き入れた。 「どうかなっ」 「戻ったわ。これでいつでも時間移動できるわ」 「よかったよかった。みちるちゃんも、長門っちもありがとうさ。さっそくだが、作戦を練らないとね」 俺は鶴屋さんに頼んで特殊部隊を集めてもらった。森さんをチーフとする機関の工作部隊のメンバーを編成してくれるよう頼んだ。 「みんな、みくるにタイムマシンが戻ったようだから、時間を遡ってタイムマシンの破壊工作を実行するよ」 タイムマシンを使って別のタイムマシンを壊しに行くなんて、なにか間違っている気もするが。自分たちの存在が消えてしまうということを言っておいたほうがいいだろうか。と俺が心配してるのを、鶴屋さんはサラリと言ってのけた。 「これを決行したら、あたしたちだけじゃない、世界の歴史が変わってしまうからそのつもりでね」 全員が、覚悟の上だというようにうなずいた。レジスタンスというのはそういうものなのかもしれない。 「ハルヒが抵抗すると思うんですが、手加減してやってください」 新川さんはうなずいたが森さんはなにも言わなかった。俺はまた蹴られるんだろうな。 黒装束に着替えた朝比奈少佐は俺に言った。 「キョンくん、いろいろありがとう。これでお別れになるかもしれないけど、わたしのことをよろしくね」 何も言えない。俺はこれ以上なにも言えなかった。ただ手を握り締めただけだった。 部隊の面々は武器を構えたまま朝比奈少佐を取り囲んで、そのまま時間移動して消えた。新川さんの赤いバンダナだけがなぜか目に焼きついて残った。 工作員を見送ったあと、俺たちも後を追うことにした。長門によればあのとき不可視遮音フィールドの中に俺たちがいたようだから。俺は鶴屋さんに別れを告げた。 「じゃあ鶴屋さん、俺たちは自分の時間に戻ります。いろいろとごめんなさい」 「いいってことさね。スゴロクが振り出しに戻ったと思えばいいのさ」 そう言ってくれる鶴屋さんの顔を、俺はまともに見ることはできなかった。俺の表情があんまり悲愴だったので、長門が心配したのだろう。俺の目をじっと見て言った。 「……心配しないで。彼らは死ぬわけではない」 「でも世界は消えてしまうわけだよな」 「……分岐する時間線とは、物理世界のコピーが生まれるということではない。多次元的な要素の積み重ねがその後の流れを作るだけ」 一次元の時間軸しか考えられない俺にはよく分からん。 「じゃあ遡って歴史を改変したらどうなるんだ?」 「……この歴史のいくつかの要素が消え、元の流れに戻るだけ。異なる要素でも同じ空間に存在できる」 「じゃあ全員が消えるわけではないのか」 「……そう。元の流れに生きている、と考えられる」 どうやら時間論は一生かかっても俺の手に負える問題じゃなさそうだ。 「じゃあそろそろ」 「あそうそう、キョンくんにずっと渡そうと思ってたんだけど」 「なんでしょうか」 「うっとこに江戸時代から伝わる手紙らしいんだけどね。これ、どうもキョンくん宛てじゃないかと思うんだよ」 俺は茶色く煤けた巻物っぽいものを受け取った。 「よく分かんないんだけどさ。倉の中にこれだけが焼け残っててね」 「これラテン語かなんかですか」 ボロボロになった布らしきものを開いてみるが、虫に食われたりかすれたりしてほとんど読めない。かすかにSOSという文字と俺の名前だけは分かった。よくは分からんが受け取っておこう。 「戻ります。鶴屋さん、いろいろありがとう」 「みちるも元気でやんなよっ」 鶴屋さんが笑って軽く敬礼する姿が哀愁っぽく見えた。 俺と長門は朝比奈さんと手を繋いだ。風景がぐるぐると回転し始め、足元に吸い込まれていく。 俺たちはちょうど森さん一味が転がり込んできたところに出現したらしい。銃を構えた一団が俺たちを縛り上げていた。長門の不可視遮音フィールドで姿をくらまし、部屋の隅で様子を伺っていた。自分が蹴られるのを見るのはこっちも痛い。 「なるほど。ってちょっと待て、あんたらに正しい歴史の記憶がるのはなんでだ?」 「わたしが歴史を修復したからよ」 ってこのタイミングには朝比奈さんが三人いることに?壮観だなオイ。 「自分たちがやったことを償うがいい」 森さんが凄んだ。ええ。これが償いになるかどうかは分かりません。正しかったかどうかもわかりませんが、俺がやれることをやったつもりです。 時間移動技術が消え、一味もかき消すように消えたあと、スプリンクラーが作動した。濡れネズミなったみんなを見届けてから、三人はまた時間移動した。 俺たちは出発地点の時間に戻ってきた。さっきと同じ喫茶店のシートに座っていた。コーヒーはまだ冷めていなかった。 「職場に戻りましょう。データが残ってるから、もしかしたら別の森さんの一味が現れるかもしれないわ」 古泉にハルヒを連れ出せと言い残しておいたので、実験室のドアはロックされていた。自分のIDカードで中に入った。長門が修復して部屋を出たときと何も変わってない。 「どの次点まで戻せばいいんだ?すべて破壊するのか」 「……宇宙ひも理論の実験データを消去、わたしたち以外の記憶を消す」 「じゃあやってくれ」 長門が詠唱し、加速器をはじめとする実験機材、すべての論文、パソコンの中のデータ類、実験データが音もなく静かに消え去った。 「朝比奈さん、これでよかったんですよね」 「ええ。そうだと思うわ」 「あいつら、ちゃんと生きてますよね」 「たぶんね。ここからはじまる新しい世界に生きてるわ」 朝比奈さんが耳に手をあてていた。 「TPDDが消えちゃったみたい」 「まさかそんな」 「……時間移動理論が白紙に戻り、既定事項が消滅した」 「そう……もうわたしは存在できない……みたい」 朝比奈さんの声は段々と小さくなっていった。 「キョンくん、ごめん……ね……」 「朝比奈さん待って!」 俺は朝比奈さんの名前を叫んだ。謝るように両手を合わせた朝比奈さんの姿がだんだんと透けていく。その姿が消えてしまうまでの数秒間、映像が超スローモーションで流れたように見えた。金色のブレスレットだけが床に落ちてくるくると回った。 出会ってから七年にもなろうかという朝比奈さんと過ごしたこの時間が、その事実すらなかったことに変わり果て、俺は呆然としていた。消えてからもその空間をじっと見つめていた長門の目は潤んでいた。俺と長門はどちらからともなく手を握り合い、数秒前までそこにいた、可憐な女性の名残を必死に記憶に刻もうとしていた。 「キョンどこでさぼってたのよ。どうしたの青い顔して」 「朝比奈さんが消えた……」 「朝比奈?誰それ」 暗転。 【仮説4】その1へ
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佐々木「ふふふふ・・・・・・あははははははは!!この力があれば・・・この力でキョンを!」 橘「佐々木さんっ!止めて下さい!」 佐々木「・・・いやだね。この力で私は世界をやり直す!今度は仮面なんかいらない!」 橘「世界をやり直して!貴女の望むようにして!それで貴女の望む彼はどこにいるんですか!貴女が欲しかったのは本当にそんな力だったんですか!?」 佐々木「・・・・・・」 橘「・・・止めないというのなら・・・・・・この命に代えても貴女を止めます!」 神の力を得た佐々木。しかし橘達の予想とは裏腹に世界を作り替えようとする。 佐々木が世界を作り替えてゆく中、一般人であるはずのキョンに能力が芽生える!キョンがとった最後の手段とは!? 大人気の涼宮ハルヒシリーズ最終巻!どんな結末が待っているかは自分の目で確かめろ!最後まで見逃せない! 涼宮ハルヒの終結、今冬発売予定!
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これは「涼宮ハルヒの改竄 Version K」の続編です。 プロローグ 俺はこの春から北高の生徒になる。 そして明日は入学式だ。 担任教師からは「もう少し頑張らないときつい」と言われたし 親父と母さんは「もうすぐ高校生なんだからしっかりしなさい」と言われた。 はぁ、全く以って憂鬱だね。 さぁ、明日は朝から忙しくなりそうだし、もう寝るとするか。 睡魔が俺の頭を支配する寸前、何故だか「はるひ」の泣き顔が頭をよぎった。 なんであいつの顔が出てくるのだろう? 等という疑問も睡魔に飲み込まれていった・・・ とてもいい夢を見た様な気がする。 どうせなら、現実と入れ替えたいと思うような夢だった。 ん?どうして、夢だって分かるのかって? 何故なら、それは現実ではまずありえないことだったからな・・・ だから夢だって分かる訳さ。 どうやら夢というのは一番いいところで終わるものの様だ。 もう少し見ていたい気もするのだが・・・ 最近、腕がメキメキと上がる妹のボディプレスで俺は目を醒ました。 「妹よ、もう少し優しい起こし方は出来んのか?」 「だって、こうしないとキョン君起きないもんっ!!」 ふむ、どうやら中々起きない俺にご立腹の様だな。 俺が起きたのを確認すると足早に1階へと降りていった。 それを見送った俺は枕元の時計で時間を確認する。 そこで頭が一気に覚醒した。 ヤベッ、寝坊したっ!! 起こしてもらって寝坊してたら、そら腹も立つわな・・・ 妹よ、スマン。 「涼宮ハルヒの入学 version K」 俺は慌てて部屋を出て階段を駆け下りた。 が、その時足が縺れ、俺は豪快に階段を転げ落ちた。 母さんが慌ててリビングから出てくる。 「ちょっと、キョン大丈夫っ!?」 「いって~、初日の朝からこれかよ?ダッセー」 「そんなことどうでもいいわよっ!!それよりちゃんと立てるの?」 「あぁ、大丈夫だ。朝から騒々しくしてスマン」 そう言って俺は立ち上がった。 が、一瞬フラついて壁に手を当てた時、俺の腕に激痛が走った。 「っ痛!」 俺はもう片方の手で痛みが走った腕を押さえた。 「ちょっと腕見せてみなさい」 それを見ていた母さんは、俺の腕を心配そうな顔で見ていた。 「折れてはいないみたいだけど、一応病院に行った方が良さそうね」 「これ位なんて事無いから、大丈夫だ」 と言った俺は母さんにポカっと頭を殴られた。 「確かにただの打撲かもしれないけど、万が一って事があるでしょ?学校には連絡しとくからとりあえず支度だけはしときなさい」 「分かった。朝から面倒掛けてスマン」 「いいわよ。あたしが年取ったらいっぱい面倒掛けてやるんだから。覚悟しておきなさい」 この時ばかりは母親の強さというものが骨身に染みた。 「あぁ、幾らでも掛けてくれ」 「えぇ、そうさせてもらうわ。お父さん帰ってきたらすぐに病院に行くわよ。だからさっさと着替えなさい」 と言いながら俺の寝巻きを剥いできた。 「ちょ、自分で脱ぐからそれだけは勘弁してくれ~」 「何言ってんの?腕怪我してて自分じゃ脱げないだろうと思って手伝ってやってんじゃない。いいから黙って剥かれなさい」 前言撤回したくなってきた。 この人は間違いなく遊んでいる。 そこへ妹が興味を引かれてやってきた。 「何してるの~?」 「なんでもあr「あ、ちょうどいい所へ来たわ。キョンが腕に怪我したから寝巻き脱がすの手伝って」 「そうなの~?キョン君大丈夫~?」 それを聞いた妹は心配そうな面持ちで俺を見てきた。 あぁ、お兄ちゃん想いの妹を持って俺は幸せ者だなぁ等と思っていたら、妹は俺のズボンを引っ張り出しやがった。 ここから 「こ、こら、ズボンを引っ張るんじゃありません。」 「なんで~?ケガしちゃって大変なキョン君のお手伝いしてるだけだよ~」 もはやこの親娘を止められる奴なんかこの世に存在しない事を悟った俺は抵抗を諦めた。 「好きにしろよ、もう」 母さんと妹から強制ストリップショーを敢行させられた俺は無事北高の制服に身を包んでいた。 のだが、それだけでは終わらなかったのである。 現在、母さんは学校と親父に電話を掛けている。 俺はというと、テーブルに座り朝食にありつきたいのところなのだが箸を妹に拘束され、俗に言う「お預け」状態にあった。 俺は俺の箸を強奪して至極楽しそうにしている妹を恨めしい目で見た。 「お母さんが電話終わるまで待ってなさいって言ってたでしょ?」 いったい何なんだこれは?果てしなく嫌な予感がするぞ。 そして母さんが電話から戻ってくると俺の嫌な予感が的中したのだ。 「腕が痛くてご飯もおちおち食べられないキョンのために、あたし達が今日だけ特別に食べさせてあげるわ」 なんですと~っ!? 今、この人はなんて言ったの? って、俺が現実逃避している間に母の手により一口サイズにつまんだ白米が口元まで進攻してきていた。 っく、覚悟を決めるしかないのか? 「最近、キョンったら全然釣れないんだもの。こういう時しかキョンで遊べないもんねぇ?」 「うん、キョン君で遊ぶの久し振りだから楽しい~」 こいつ等、やっぱり遊んでいたのか・・・ 親父、早く帰ってきて俺を助けてくれ。 もう、あなただけが頼りだ。 その時、玄関の方から「ただいま~」と救世主の声が聞こえた。 グッジョブ親父!! と思ったのもつかの間だった。 「なんだ?怪我したっていうから急いで帰ってきたのに、随分羨ましい事してるじゃないか?」 「そう思うんだったら代わってくれ、今すぐに」 「キョンってば冷た~い、あたし達はもっとキョンと仲良くしたいだけなのに」 「キョン君は私達が嫌いなの~?」 なんなんだ、このアホアホ家族は・・・ 「分かった、分かったよ。有難く頂きます」 俺はヤケクソで母さんと妹から運ばれる朝飯を食い尽くした。 「美味しかった?美味しくない訳無いわよね~?」 「あぁ、美味かったよ。もうお腹いっぱいだ、色んな意味でな」 「そう?褒め言葉として受け取っておくわ」 俺の皮肉もどこへやらで母さんはどうやら満足したらしい。 はぁ、やれやれ・・・ 「じゃあ、そろそろ病院行きましょうか」 やっとか・・・長かった。 「おぅ、先にこいつと車で待ってるぞ」 「分かったわ~」 というわけで俺は今親父と二人、車内で母さんと妹を待っている。 「怪我はどうなんだ?そんなに酷いのか?」 「いや、ただの打撲だと思う」 「そうか、あんまり母さんに心配掛けるなよ。あぁ平静を装ってるが、内心はパニック寸前なんだからな」 また迷惑を掛けちまったな。 後できちんと謝ろう。 「あぁ、分かってる。これからは気を付ける」 「あぁ、そうしてくれ。あとたまにはちゃんと話もしてやれ。母さん寂しがってるぞ」 「そうする」 そうだ。普段は強気でいるけど母さんはその実とっても弱いんだ。 俺は母さんをどれ位傷つけたんだろう・・・ 図体ばっかで全然成長出来てないな俺・・・ その時、母さんと妹が車に乗り込んできた。 「ごめ~ん、お待たせ!!さぁ、病院へレッツゴー!!」 母さん、病院はそんなハイテンションで行くところじゃありませんよ・・・ その後、病院へ行って診察してもらった結果やっぱり打撲だった。 それを聞いた時の母さんの安心しきった顔を俺は一生忘れないだろう。 そんなこんなでやっと北高へ着いた。 もう式も終わっていて今はクラス毎にLHRが行われている時間だ。 俺は「もう式も終わってるんだから今日は休もう」と言ったら「ダメ。初日からサボリなんて許さない」と両親から最大級の威圧を与えられ今、受付に向かっている。 俺は片付けを始めている受付で自分の受験番号と名前を述べた。 「受験番号???の○○○○です。事情が合って遅れてしまったのですがクラスを教えて頂けますか?」 「はい連絡は受けています。○○○○さんのクラスは1年5組になります。座席表は教室の入り口に貼ってありますから教室に入る前に確認して下さい。本日は御入学おめでとうございます」 「はい。ありがとうございます」 俺はペコッと頭を下げると1年5組の教室を目指した。 教室のドアの前に立って自分の席を確認した。 どうやら、今教室内ではクラスメイト達が自己紹介をしている様だ。 その時、自分の後ろの席の奴の名前が「涼宮ハルヒ」と書かれていることに気づいた。 へぇ、あいつと同じ名前だなぁ、どんな奴だろ? もしかしてあいつだったりしてね? いや、そんなドラマ的展開はないか。 あいつは今元気でやってんのかなぁ?等と考えつつドアを開けた。 「東中出身。涼宮ハr「遅れてすいませんでした~」 ヤベッ、自己紹介と被っちまった。 とりあえず謝っておくか。 背後から怒りのオーラ出しまくってるしな。 なんか、今日は朝から謝ってばっかりだな、俺・・・ 「あ~、とりあえずスマン」 謝った途端、そいつはこっちを怒り120%で睨みつけてきた。 そこにはすっかり美人になった「はるひ」がいた。 いや、前に会った時も十分美人だったぞ。 今のはそれ以上という意味だ。 って俺は誰に説明してんだ? 俺が見惚れているとハルヒが聞いてきた。 「ちょっとジョン、なんであんたがここにいるのよ?」 おいおい、誰だよそりゃ? 「誰だ?そのジョンというのは?頼むからこれ以上変なあだ名は増やさないでくれ。はるひ」 「じゃあ、あんたはあの時の「あいつ」なの?」 「あぁ、久しぶりだな」 「ホントにね。ってか何であたしの名前知ってんのよ?」 あぁ、周りの目線が冷やかしモードになってきたな。 初日からこれはマズイ、色んな意味で・・・ 「それは話せば長くなるんだが、とりあえず後にしよう」 頭に?マークを浮かべているハルヒに手で周りを見るように促した。 ハルヒは満足出来ないという面持ちだったがとりあえず席に座ってくれた。 はぁ、とりあえず助かった・・・のか? 俺は、このクラスの担任らしい人に挨拶をした。 「遅れて申し訳ありませんでした。ただの打撲で済みました」 「そうか、それは良かった。しかし、打撲だからといって侮っちゃだめだぞ」 「はい、ご心配おかけしました」 「よし、じゃあ席に着け。今は見ての通り自己紹介をしてもらっている最中だ」 「はい」 そう言うと俺は自分の席に着いた。 「じゃあ、今来た○○○○には最後に自己紹介をしてもらう。悪いが涼宮もう一回頼む」 な、なんだって~っ!? まぁ、落ち着こう。 落ち着いてハルヒの自己紹介を聞こう。 「東中出身。涼宮ハルヒ。趣味は不思議探索です、以上」 なるほど、不思議探索ね。 って、不思議探索ってなんだ? 後で聞いてみよう。 こちらに向けられている怒りの視線の理由と一緒に。 そして、本来なら最後のクラスメイトの自己紹介が終わり俺の番がやってきた。 「○○中出身の○○○○です。一年間よろしくお願いしま~す」 なんともありきたりな自己紹介だと自分でも思う。 しかしながら、変にギャグキャラを気取って一年間そのキャラを演じ続けられる自信もない。 今日の予定は全て終わった様でSHRの後、本日は解散となった。 席に座ってボーっとしていると国木田が話しかけてきた。 「キョン、朝から災難だったみたいだね~」 「あぁ、全くだ」 ホント色んな意味で大変だったさ。 「キョン、この後はどうするの?」 さっさと帰って寝たい気もするが、ハルヒと少し話をしようと思う。 まぁ、そんな事を国木田に言えるわけも無く 「あぁ、ちょっと用事がある」 と誤魔化した。 「そうなんだ、じゃあまた明日ね」 「あぁ、じゃあな国木田」 国木田を見送るとハルヒの方に視線を向けた。 「な、何よ?キョン」 ちょ、お前まで俺をそう呼ぶのか!? 俺は「やれやれ」と言いながら溜息をついた。 なんとかやめてくれないものかと微かな希望を持ってハルヒに言った。 「お前も、俺をその名で呼ぶのか?出来たら勘弁してもらいたいのだが」 「いいじゃない。キョンの方が愛嬌があるんだから」 「はぁ、もう好きにしてくれ」 ハルヒの機嫌もどうやら良くなっているようだからな。 「そうするわ。でもホントに久しぶりだわ。キョンはあんまり変わってないわね」 あぁ、俺も朝に自分でそれを思い知ったさ。 「ははは、そうかもな。ハルヒはとっても綺麗になったな。一瞬誰か分らなかったぞ」 ハルヒの顔が段々赤くなっていく。 さて、俺は今なんて言ったんだろうな? え~っと・・・ うわっ、何恥ずかしい事さらっと言ってんだ俺!! 自分の顔が熱くなっていくのが分かる。 その時、ハルヒの携帯が鳴った。 と思ったら俺の携帯も鳴り出した。 発信は母さんか。 何の用だろうな? ハルヒが俺の方を見ているので俺もハルヒを見て無言で頷いた。 ハルヒが電話に出たのを確認して俺も電話に出た。 「あ~、俺だけど」 「あっ、キョン?もう遅いわよ、何してるの?今から昼ごはん食べに行くからさっさと出てきなさい」 「ん、分かった。今から行く」 「ちゃ~んと、ハルヒちゃんと一緒に出てくるのよ、いいわね?一緒に来なかったら昼はキョンの奢りだからね」 「おい、母さん何言t「プチ」 ツー ツー ツー 何で母さんがハルヒがいるって知ってるんだ? さっぱり、理解できん・・・ 隣を見るとハルヒが俺と同じような事を考えてる様な顔をしている。 俺はまた「やれやれ」と溜息をついた。 俺とハルヒは横に並びながら昇降口へと向かった。 昇降口を出ると、親父と母さんがどっかで見た事ある人と話をしていた。 誰だっけ?どっかで見た事あるんだよな。 あっ、あれってまさか・・・ 「キョン、どうしたの?」 一応聞いてみるか・・・ 「あれ、お前のとこの両親だよな?」 「うん、そうだけどそれがどうかしたの?」 だよな、道理で見た事あるはずだ。 「隣に居るのは俺の両親と妹だ」 「ふーん、そうなんだ。って、えぇ、な、何であたしの両親とあんたの両親が仲良く話してんのよ?」 「俺にもさっぱり分からん」 すると妹がこっちに気づいた。 まだ気付くな!まだ心の準備が出来てない!! 「あ~、キョン君達来たよ~」 「や~っと来たの。もう、ハルヒちゃん可愛いから2人の世界に入っちゃうのは分かるけど、少し位周りの事も考えなさいねキョン」 「ですよね~。でもキョン君もあんなに格好良いからハルちゃんが夢中になるのも分かるわ。あたしもあと20歳若かったらキョン君狙ってます」 等と俺の母さんとハルヒの母親が冷やかしてくる。 「ちょ、何勘違いしてるのよっ!?あたし達はそんなんじゃないわよ」 「「ふ~ん」」 「あ~もう!!黙ってないでキョンも何か言ってやりなさいよっ!!」 だめだ。相乗効果で手がつけられなくなっている。 「スマン、ああなると母さんは止まらないんだ。諦めてくれ」 「あんた、苦労してるのね。親からもあだ名で呼ばれてるし」 「分かってくれるか?」 「えぇ、あんたに送ってもらった日からあたしの母さんもあんな感じだから・・・」 「お互い苦労するな」 「全くね。でも、あんたとなら誤解されてもあたしは嫌じゃないけどね」 「え、それはどういう意味だ?」 「なんでもな~いわよっ!!」 そう言って走って行くハルヒの顔は心なしか赤かった。 俺はダブルマザーの元へ走っていくハルヒを追い掛けた。 その後、俺の家族とハルヒの家族とで合同入学祝いが執り行われた。 親たち曰く「祝い事は大勢でやるもの」らしい。 この現場をクラスメイトに目撃されてない事を祈ろう。 「高校生にもなって酒も飲めんでどうする~」 とハルヒの父親が突然絡んできた。 「いや、高校生だから飲んじゃいけないと思うんですが」 必死に抵抗していると、俺の親父まで悪ノリしてきた。 真面目なくせにノリだけはいいからな、親父・・・ ダブルマザーもアテにならないので俺はハルヒにSOS信号を発信した。 ハルヒはテーブルに置いてあった日本酒を一気に飲み干して親父達に言い放った。 「ちょっと、あたしのキョンになにしてんのよっ!?いい加減あたしに返しなさいよっ!!」 は、ハルヒさん、いきなり何を・・・ 親父達がポカーンとしている間に俺は腕の牢獄を抜け出し、慌ててハルヒの手を引いて部屋から脱出した。 俺は中庭に出るとハルヒを備え付けられたイスに座らせた。 こうしてるとあの時みたいだな・・・ あぁ、気まずい。何か話題を振らねば。 「どうしたんだ、いきなり?あんな事言うからビックリしたぞ」 「ん、ごめん・・・」 こうして見るとやっぱりあのときのハルヒだな。 そう思い、俺はハルヒの頭を撫でた。 ハルヒは恐る恐る顔を上げて俺を見上げてくる。 俺はそれに応えるように微笑んだ。 「もう、すっかり元気になったみたいだな。これでも結構心配してたんだぞ?」 「ホントに?ホントに心配してくれたの?」 「あぁ、ホントに心配したぞ」 「ありがと・・・」 突然ハルヒが俺に抱きついてきた。 俺は心臓が止まるかと思うほど驚いていたが、またハルヒの頭を撫でてやった。 ハルヒが俺の胸元から顔を覗きこんできて、愛しさのあまり我慢が出来なくなった俺はそっとハルヒの顔に自分の顔を近づけた。 ハルヒはそれに応えてくれたようで俺の首に両腕を回してきた。 そして俺は目を閉じて待っているハルヒの唇に自分のそれを近づけた。 「あ~、キョン君とハルヒちゃんがちゅーしようとしてる~」 突然の声に驚いた俺とハルヒはばっと離れて声がした方を凝視した。 そこには妹が指を指しながら立っていた。 「妹よ、そこで何をしている?」 「ん~とね、お母さん達がキョン君達帰ってくるの遅いから呼びに言ってきてって」 「そうか、分かった。今から行くから先に戻ってなさい」 「うん、分かった~」 妹が足早に中庭を出て行ったのを見計らって俺はハルヒに話掛けた。 「だ。そうだ。残念だが次回に持ち越しだな」 「そうね、ホントに残念だわ」 「仕方ない。戻るぞ」 「えぇ、そうしましょ」 と言ってハルヒは立ち上がろうとした。 が上手く立ち上がれず転びそうになる。 俺は「やれやれ」と溜息をつきながらハルヒを抱きとめた。 「大丈夫か?またおんぶしてやろうか?」 「大丈夫、歩いていけるわよ」 ハルヒは真っ直ぐ歩けないほどフラフラしていた。 仕方ない。またあれをやるか。 「なんなら、お姫様抱っこでもいいが?」 「そうね、そうしてもらうわ」 これは予想してなかった訳ではないが流石に驚いた。 ハルヒはしてやったりという顔をしている。 こりゃ、一本取られたな。 まぁ、いいか。 「よし、いくぞ」 と言ってハルヒを持ち上げた。 こりゃいかん、これはおんぶ以上に緊張する。 「スマンが、慣れてないから首に掴まっててくれるとありがたい」 ハルヒは俺の言った通りに首に両腕を回しながら文句を言った。 「自分からするっていったんだから、しっかりしなさいよね」 あぁ、なんか懐かしいな、このやりとり。 「おう、任せとけ」 部屋に向かってる最中ハルヒは俺に聞いてきた。 「ねぇキョン、あたし変われたかな?頑張れたかな?」 「お前が自分で変われたって、頑張れたって思うのなら達成出来てるんじゃないか?」 「うん、そうだよね。でもね、あたしを変えてくれたのも、頑張れるようにしてくれたのもキョンなんだよ」 「そ、そうなのか?」 びっくりだ。 俺なんかが誰かの役に立てるなんて。 「うん、そうだよ」 「そうか、それは光栄だね」 「だからキョン、これからずっとよろしくね!!」 「おう、こちらこそよろしくな」 部屋に到着するとみんなビックリしていた。 まぁ、当然だよな。 俺は腕からハルヒを下ろした。 残念そうに見えるのは・・・気のせいじゃないだろう。 ハルヒは何かを思い出したらしい。 ハルヒは制服のポケットからアイロンをかけたハンカチを取り出して俺に差し出した。 「キョン、これ返すわ。いままでありがと」 「ん、あぁ、これか。なんだったらずっと持ってていいぞ」 「ありがと。でも、もう必要ないわ。だって・・・」 「だって?」 聞き返すまでも無いな。 「これからはずっとキョンと一緒なんだからっ!!」 fin エピローグ(ver Hのエピローグ2の続き) 「ねぇ、キョン。さっきの続きしよ?」 「ん?あ、あぁ」 正直俺は混乱しまくっていた。 さっきのってのは、やっぱり料亭でのアレの事だよな・・・ あの時は、雰囲気やら勢いやらがあったが今は違う。 クソッ、どうする俺!? 今、してしまったら歯止めが利かなくなってしまうかもしれない。 俺達、正式に付き合ってるわけじゃないんだからまだそこまでしてしまうのはマズイだろ。 俺はふと、ハルヒの顔を見た。 俺は愕然とした。 そこにさっきまでの楽しそうなハルヒは居なかった。 代わりにいたのはあの日の泣いているハルヒだった。 「あ、その、ハルヒ?」 「そ、そうだよね。あたしはキョンの彼女でもなんでもないんだからそんなの無理よね。あたし一人で勘違いしてた。ゴメンね、無理言って・・・」 どうやら考えていた事が口から出ていた様だな。 俺のバカヤロウっ!!朝、気付いた事が何にも活かされてないじゃないか!! 今日の出来事を全部思い返してみろよ!! 今日、ハルヒは何度も告白してくれて俺はそれに何度も返事してるじゃないか!? あぁ、そうだった。 ハルヒは何度も勇気を振り絞って俺に想いを打ち明けてくれたのに、俺は一度も自分の想いをハルヒに伝えていない。 だったら、今の俺がするべき事は一つだ。 俺はハルヒの肩にそっと手を置いた。 ハルヒは驚いた顔で俺を見ている。 「ハルヒ、ホントにゴメンな。お前は何度も俺に想いを打ち明けてくれたのに、俺はお前になんにもしてやれてない。ホントどうしようもねぇバカヤロウだ」 ハルヒは黙って聞いてくれている。 「あの日からいつも頭のどっかにお前がいた。お前が望むならいつまでだって傍にいてやる。だから、ハルヒもずっと俺の傍にいてくれ。頼む」 ハルヒは、俺が言い終わると同時に抱きついてきた。 「キョン・・・キョン~、・・・ヒック・・・ホントに・・・・ホントにあたしでいいの?あたしなんかでいいの?」 ハルヒは俺の胸でわんわん泣いた。 「当たり前だろ?もう、お前以外なんて考えられない」 俺も涙で何も見えない。 俺はわんわん泣くハルヒを二度と離さないように、壊さないように抱きしめた。 「ハルヒ、好きだよ。愛してる」 「あ・・あたしも・・・グスッ・・・キョンを愛してる・・ヒック・・大好きだよ・・キョンっ!!」 ガキの恋愛だと笑われたって構わない。 俺はもう、生涯ハルヒを離さないっ!! 俺は、ハルヒの頭に手を回し、そっと俺の方へと寄せた。 ハルヒはこちらを向き、まだ涙がたっぷり溜まっている瞼を閉じて待ってくれている。 俺は自分の唇を、ハルヒのそれにくっ付けた。 たったそれだけの行為でこんなにも幸せになれる。 ハルヒの唇からハルヒの想いが流れ込んでくるようだった。 どれ位していただろう・・・ お互いが自然に唇を離し、その余韻に浸っていた。 もう一度と唇を近づけた時、ドア越しに会話が聞こえた。 なんだ?と思っていたらハルヒと目が合った。 どうやら、ハルヒにも聞こえるらしい。 俺とハルヒはそーっとドアに近づき、聞き耳を立てた。 「・・・・・ルヒちゃんはうちのにはもったいない位です。」 「ホントよね。キョンにはもったいないわ」 「そんなこと言わないで下さい。キョン君以外の子にハルヒを上げる気はないんですから!ね、お父さん?」 「そうですよ。十分ハルヒと渡り合っていけます。あの子が私以外の異性であんなに楽しそうに話すのはキョン君だけなんですよ」 「そう言ってもらえると光栄です。これからもうちのをよろしくお願いします」 「あたしからもよろしくお願いします」 「「こちらこそ」」 ハルヒは肩をワナワナさせている。 どうやら大変ご立腹の様子だ。 無論、俺も例外ではないのでアイコンタクトを取ると一緒にドアを物凄い勢いで開けた。 「「さっさと寝ろ~っ!!雰囲気ぶち壊しだ~っ!!!!」」 この後、親たちから散々からかわれたのは言うまでも無い。 はぁ、やれやれ fin エピローグ2 後日談 「そういや、なんであの時ハルヒの両親と一緒に居たんだ?」 俺はふとそんな疑問を母さんにぶつけた。 「あぁ、あれ?とりあえず気分だけでも味わおうと思ってみんなでブラブラ校門の辺りを歩いてたら会ったのよ」 「へぇ、そうなのか?」 「うん、そうなのよ。まぁ、初めから一緒に入学祝いをする計画だったんだけどね」 「ふーん。って、あの時初めて会ったんじゃないのか?」 「違うわよ?えーっと、そうね。もう、3年位の付き合いになるかしら」 「何をどうしたらそうなるのか教えてもらいたいもんだ・・・」 「いいわよ、教えてあげる。あれは、たしかあんたがハルヒちゃんを送った3ヶ月後くらいかしらね。お父さんと買い物に行った時偶然会ったのよ」 何なんだ・・・この因果律は? 「で、そのまま一緒にお昼ご飯食べて仲良くなったわけ。どう?分かった?」 「あぁ、理解した。で、なんでそれを俺に隠してたんだ?」 「だって、親が横槍入れたら上手くいくものも上手くいかなくなるでしょ?」 「なるほど。って納得いかん。って事はあれか?同じ高校に入る事も事前に知ってたのか?」 「もちろん!!でも、まさか同じクラスになるとは思わなかったわ」 そりゃそうだ。そこまで操作出来る訳がない。 「もうあれね?これは運命よね?キョン、あんたハルヒちゃんとチューしたんだからちゃんと責任取りなさいよ?」 「あぁ、そうする」 これからもお互い苦労しそうだ。ハルヒよスマン。 「あぁ、早く孫を抱きたいなー。あたしはハルヒちゃんそっくりの女の子がいいわ。キョン頑張ってね」 もう何を言っても聞きそうにないな・・・ はぁ、やれやれ・・・ fin 涼宮ハルヒの入学 version H
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「俺はハルヒが好きだ」俺の言葉にハルヒは、はっと驚いて顔をあげた。他の2人は俯いたままだ。 俺は2人に何と声をかけたらいいかわからない。「ごめん、2人共」 「キョン…」ハルヒが不安そうに俺を見る。 「親友として、これからもよろしくね、キョンに涼宮さん」佐々木は涙をながしながら微笑み、言った。ああ、よろしくな。 「お兄さん…その…」ミヨキチは泣きながらも必死に何か言おうとしている 「涼宮さんと…幸せになってくださいね」ああ、ありがとう、ミヨキチ。 その後、俺は佐々木とミヨキチに「ハルヒを幸せにする」という誓いのキスをさせられた。俺もハルヒも真っ赤だったがな。 翌日の放課後、俺は古泉と中庭で喋っていた。 「いやあ、おめでとうございます」古泉、おだてても何も出んぞ。 いつも通り答える俺に古泉は「僕の仕事が減って、長門さんと一緒に居られる時間が増えれば、それで十分ですよ」そうかい。 「誓いのキスもしたそうですね?」何でお前が知っている! 「長門さんが教えてくれました。アナタのせいで、僕も色々大変だったんですよ?」 何が大変だったんだ? 「それは禁則事項です」ニヤニヤしながら言うな、気持ち悪い。 「ちょっとキョン!何やってんの! ハルヒが呼んでいる。横には長門もいる。行くか古泉、団長様がお呼びだ。 ハルヒのところに行くと「古泉君と何話してたの?」と俺に聞いてきた。何でもないさ。 「ふーん。まあ良いわ、次の探索の日なんだけど…」 楽しそうに話すハルヒの顔を俺はずっと見ていた。「ちょっとキョン!聞いてるの!」ああ、聞いてるさ。 俺はハルヒを選んだことに後悔していない。先のことなんて分からない。きっと辛い事もある。 でも、コイツの、ハルヒの笑顔を見ていたいから俺はハルヒと幸せになる。
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「明日の9時に駅前に集合よ!!15分前にはちゃんと来ておきなさい。 来ないと死刑だから!」 お前のせいで俺の1週間の内の貴重な2日間の休みがなくなるんだよ!! とは言えるわけもなく俺は青菜に1kgぐらいの塩をかけた状態で家に戻った どうせなら俺と朝比奈さんその他の憂鬱として小説を出してほしいものだ 翌朝、煩くも目覚まし時計のベルが鳴った と同時に妹がニードロップ 毎度騒がしい妹だ 時計を見ると8時40分 やべぇ寝過ぎた!! 俺は闇討ちに遭った坂本竜馬のように焦りながら自転車を漕いだ と同時に不可解な違和感を覚えた とそんなことより急がねば! 駅前に着くと驚愕した 他人が俺の顔を見ればツチノコを見つけた1農民の顔に見えただろう 「遅いじゃない!罰金!」聞き慣れただろう声のトーンが異常に高い ちっさいハルヒがそこにいた 「やぁ、おはようございます」不機嫌な俺をさらに不快にさせる声が聞・・・ 古泉もやけに小さかった 何か[禁則事項]の黒ずくめの男にでも薬を飲まされたのか?おい 「おはようございます、キョンくん」 砂漠で水があれば自分より先に飲ませるであろう人物の声を聞き振り返りまた驚いた 大人みくるがそこにいた 朝から感じていた違和感はまさにこれで ざっと周りを見渡してしたくもないが現状を把握した 大人は子供に 子供は大人になっているようだ しかも高校生以上が子供で中学生以下が大人になっているようだ 今すぐにでも現実逃避したい それと1つだけ疑問に思った なぜみくるさんだけ大人なんだ ロリか!この世の陰謀か!! と嘆いてる時に下腹部に弱い衝撃が走った ハルヒ(小)が俺にドロップキックをしたからだ 「もう!何ごちゃごちゃ言ってるの!さっさと行くわよ」 はいはいと答えた刹那に何故小さいこいつの尻にしかれなきゃならんのだということを心の中で叫び駅を後にした さてこの状況を見た人にどう説明しようか 一見すると美少女にどう見てもかっこいいとは言えない普通の俺―(自分で言っちまった・・・)―の凸凹カップルと その娘2人と息子1人だ っと・・・その前に影みたいな存在のこいつの状況も教えんとな・・・ いたって普通だ 昨日見かけた姿となんら変わりない さすが宇宙人と言うべきか 言わないほうがいいだろうな それよりなんで俺とお前が普通なんだ?またハルヒの迷惑この上ない願いか? 「・・・違う」ではなんだ?まさかお前の力か? 「・・・そう」俺は頭を抱えた まさか黒幕がこいつだったとは・・・ じゃ・・・なんでこのような世界にお前は変えたんだ?何か不満でもあったのか?ハルヒに 「違う」はっきりと断った 「はっきりといえば私ではない 私はこの状態に食い止めてるだけ」 は?と首を捻る フェルマーの最終定理を解いてる学者の姿が想像できたね まぁ俺にはsinθもわからんがな 今日の俺は自虐傾向のようだ もし夢ならば覚めてくれ 「朝倉の来襲」俺は耳を疑った 朝倉はお前が消したんじゃないのか? 「詳しく言えば朝倉馨の力によりこの世界は捻じ曲げられてしまった」 ぷっと吹き出しかけたがこいつの顔を見ると欠伸もできない いや・・・こいつはいつも無表情なんだがな 宇宙人でも新人さんがいるんだな が、俺が命を狙われることもなさそうだ 「そしてあなたの命を狙っている」緩んでいた俺の顔が空気を一気に抜いたペットボトルみたいに強張った おいおい冗談だろ・・・なんでまた俺が狙われなければならんのだ もしかして妹さんとかそういうことじゃないだろうな 「当たり」躊躇なく答えやがった まったく・・・ 神様よ もうちっと普通なところへ命を授けてくださらなかったのか もちろん人間で つうかこんなので当たったって嬉しくとも何ともねぇよ っていうかなんでハルヒや古泉は小さくされてしまったんだ? 「4年前の涼宮ハルヒには世界を改変する力がなかった だからそこに目をつけた 古泉一樹も同じ」 あぁなるほど・・・って納得できるかぁ!!今俺の不満は休日を削られたことからそちらに向けられた やれやれ貧乏くじ引かされてしまった・・・ 「世界を元に戻すにはあなたを狙って相手が姿を現した時に迎撃する そして世界を元通りに改変する」 つまり俺はお前に守られてるから命を落とすことは無いんだな? 「保障はできない」 おい! 「何してるの?早く来なさい!」ったく小さくなっても気は大きいままなんだな こいつはよぉ!! 「ははは まぁそこも魅力の1つでしょう」こいつの笑顔の気持ち悪さも同じだな っていうか顔近い!あと2mmしかねぇじゃねぇか 「なんか 朝起きたらいつもの服着れなくて・・・成長期でしょうか」恐らくあなたは成熟期でしょう というより今は究極体の方があってますよ とまぁハルヒと古泉が小さくなり朝比奈さんが大きくなった以外は変わることもなく・・・とは言い切れないが奇妙な1日が終わった 「明日は休みにするわよ!とりあえず自主活動で謎を探してくること!!解散!」 と今日の憂鬱感の70%を占める原因となった奴の声を聞き俺は帰路についた 長門込みで 「明日駅前に来て」またか・・・んで何時なんだ?「1時」1時かえらい遅いもんだ それならぐっすり寝させてもらうぜ 「朝1時 駅前に来て 恐らくこの現象の渦中の人物が来る それを仕留める」 俺の週末は恐らくBAD ENDで飾られるであろう 予感が的中した 仕方ないなと思い今日は早めに寝た 時計のアラームが鳴りもう少しと考えているうちに1時を指そうとしていた デジャヴだな・・・ってゆっくりしてる暇はねぇ 急いで着替え歯を磨き自転車で飛ばしていった すると途中で「やっほ~キョンくん どうしたのこんな時間に?まさか気になるあの子のところへ?」 貴方はいつでも明るいですね 周りは暗いのに それよりその質問の答えはNOです あながちハズレでもないが 「ははは嘘嘘 やっぱりキョンくんはおもしろいね~」どこが面白かったんだろう この人の笑いのツボが知りたい それよりあなたこそなんでここにいるんですか?「まずはキョンくんから言ってよぉ」 不安を覚えながら体がなまってはいけないのでサイクリングと答えた ハルヒのせいでなまることはないがな 「わたしもちょっとジョギングだよ 体がなまってはいけないからね ははは」 なんだ同じ理由ですか 奇遇ですね やっぱり運動に勝るもの無しですね あぁそれより急いでますので また明日会いましょう とお辞儀するとヒュッと首元を何かがかすった 手で触ると血が出てる 何故? そして次の瞬間安堵が絶望へと変わった「そしてあなたを殺しにきたの」 俺はイマイチ理解できなかった さっきまでフレンドリーな鶴屋さんがこんどは刃物を持って襲って来ただと? えぇっとこの場合某RPGではコマンドが出るんだったな・・・よし「ガンガンいこうぜ」・・・と って俺は何を考えてんだ!! あまりの出来事に気が動転しているようだ 恐らく鶴屋さんではないだろうが念のため聞いてみるか お前は誰なんだ?鶴屋さんではないな? 「あら?この顔の主は『鶴屋』っていうの?今日貴方を探しているときに公園にいたから真似してみたの どう?上手い?」 えぇ上手かったですよ 恐らく将来は主演女優賞をもらえるでしょう その時は俺も招いてくださ・・・って何を考えてるんだ・・・ いかん!いかん! 本当に俺は頭が混乱しているようだ 誰か一発叩いてくれ あとで100円なら払ってやる って眼前の鶴屋さんであっただろう物体しかいないが 「申し遅れました 私朝倉涼子の妹朝倉馨です 実は姉があなたを殺し損ねたそうなので私が代わりに来ました これから殺す相手に目的を告げるのは面倒くさいけど一応私のポリシーです」 これはこれは行儀よく ってまた命を狙われるのか俺・・・ 頼むから誰か来てくれ 谷口でもいいから お前の好きだった朝倉涼子によく似た妹さんがいるんだぞ ル●ンダイブしてでもいいから飛んできてくれ いや実際使えないなあいつは 恐らく縮こまってるだけだろうな 来るな谷口! 脳内から消えろ谷口! 「決心ついた?」 消去法だ・・・ハルヒは駄目だ小さいからな ってか来たって何もできないしな 古泉は使えないな ハルヒ同様小さいし閉鎖なんとかでしか能力を発揮できない 一緒にいるのも嫌だしな 朝比奈さんは恐らく大人でも無理だろう あいつをどこかに飛ばすことはできるだろう でもそのあとは? 最後の綱は長門だが1km以上離れているここはわかるのか? 前みたいに登場はしてくれるのか? 俺はライオンににらまれた猫みたいに震えながら後退りしつつ長門の登場を待った ドンッ 背中が無き壁にぶつかった え? 「ちょっとこの空間だけを切り取ったから逃げ出そうとしたって無駄よ」 今の俺の脳内では長門の顔と谷口の顔が浮き沈みしている えぇぃ谷口!!何故お前は俺にそんなに固執するんだ!!いい加減消えてくれ! 「空間の切り口があまりにも粗雑すぎる 切り屑も消去できていない あまりにも幼稚 だから私に気付かれる」 待ち望んでいた声が聞こえた 空耳じゃないよな? そこには長門がいた やっと来てくれたか長門 それにしてもかなり離れているぞ長門 間に合うのか?「だ」・・・?「いじょうぶ」 うわっいきなり現れるな長門 びっくりするじゃねぇか まぁつべこべ言える立場じゃないんだがな 「あら?こんにちは あなたのことは姉から聞きました あなたに邪魔されたそうですね」 「朝倉涼子は優秀でありながらも穴がありすぎた だからそこを突いた」 「では復讐としてあなたと対峙してもよろしいのでしょうか」「いい ただし勝つのは私」 なぁ俺帰っていいよなぁ もう目的は果たしたんだし・・・今日学校あ・・・今日日曜日だったな 口実にならないようだ とりあえず寝させてくれ・・・俺普通の人間じゃないか ってかなんで俺こんなに弱気なんだ 睡眠不足のせいか よし寝させてくれ 睡眠に勝るもの 「離れないで」俺の愚痴は中断された 「もうっなんでこんなに小さくなってんの?いくら医学が進歩したからってこんな薬なんてありえない・・・ なんでキョンと有希だけ変わってないの?みくるちゃんは大きくなってるし もういいわ明日になれば原因不明の薬も消えるでしょ 効く薬でも効力はいずれは消えるわけだし 明日起きたらキョンに聞いてみなきゃ 何故あんたと有希だけ変わってないの?ってね そしてキョンを脅して元に戻してもらうの この体じゃ駅まで行くのにも一苦労なんだから まぁ子供料金で電車に乗れるというメリットはあるけど そんなに電車使わないし ごちゃごちゃ考えるのはやめ おやすみなさい」 「おやおや建物がやけに大きい思ったら僕が小さくなっていたのですね このままじゃ他人に顔向けできませんよ 寝てる間に直ってることを祈ります」 「え?誰この人?ひゃっ私?何でこんなに大きいんですか・・・これじゃ服が着れない・・・明日買いに行きましょうか・・・おやすみなさい」 後ろで何か幼き時に結構はまっていたシューティングゲームのゲーム音のような音がする 戦況を見たい でも見たくない 俺がそんな葛藤の中で異様に谷口の顔が浮かぶのに嫌気が差した 頼むからお前がスケープゴートになってくれ谷口・・・ ちらっと戦況を目にしてみる さすがに俺1人を抱えて戦うのは無理があったのだろう 朝倉妹相手に苦戦しているようだった なぁ俺を帰らせてくれないか?俺がいても足手まといだろう 「この空間を一時的に元の空間に戻す際 一瞬の隙を作ってしまう そして負ける そうならないためにも帰すわけにはいかない」変な誘拐犯に捕まった気分だぜ 俺を殺そうとしてるのは第三者だがな 「それに・・・」長門が言葉を紡いだ「あなたがいれば戦闘に集中できる」おいおい逆じゃないのか? その問いには答えなかった 俺の後ろで破裂音がした 振り返ってみると朝倉妹が倒れている 「あなたは朝倉涼子より優秀 しかし勝ちを急ぎすぎた それが敗因」 長門は朝倉妹に対し冷静な口調でそう言った 某ゲームのファンファーレが俺の頭でエンドレスに流れている そろそろ眠気こらえるのも限界かもな 朝倉妹より長門のほうが相当痛手を負っている 俺にしてみりゃ長門が負けのように思える 大丈夫、このくらい平気と言い放ち体を再生させた ほんとに便利な奴だよな まったく 人間なんざ指切っただけでギャーギャーわめき、ちょっと頭打っただけで集中治療もんだ 宇宙人になれると広告が貼ってあるならば土曜日と日曜日どっちを休みにしてどっちを探索にするかと訊かれるぐらい迷うな そんときゃ人間を捨てるだろうな いかん思考回路がショートし始めた とりあえず寝させてくれ 頼む 「まだ世界の修復が終わっていない」あっさり断られたようだ 「やっぱり姉が敵わないのに私が敵うわけないよね 姉の言いつけも果たせなかったし」 そういい残すとこれまた姉と同様に砂になって消えていった 透明になるとかそういう消え方を望んだんだが 時計の短針は5時を指そうとしている 早く修復してくれ長門 「かなり複雑 でも半時間あれば修復できる」あと半時間も待たなければいけないのかよ 「待たなければ帰れない」そうだったここは隔絶された場所だった 選択肢は1つしかなかったのだ もういっそのことここで寝るか? 半時間かかるとはよく言ったもんで半時間を10分オーバーして世界が元に戻った すぐにでもベッドインしたかったが命の恩人を置いていくのも気に食わんので長門を後ろに乗せて自転車を漕いだ すまなかったな長門 お前には頭が上がらないぜ「いい」と言って本を読み始めた 眠くないのか?長門 とりあえず長門の住んでいるマンションの前に着くと長門を下ろしてやった 顔の筋肉をミクロ単位で動かし「ありがとう」と言う長門を後にして俺は帰宅した もう6時か 長くて2時間ぐらいだろうな あとは人間目覚しによって布団を剥ぎ取られるだろうな シャミセン お前が羨ましいぜ そういい残し俺は安眠を得た 起きる もう朝か ってか寝るときも朝だったが 時計を見る11時を指そうとしている いけねっ寝過ごした!!何故こんな肝心なときにあいつは起こしに来ないんだよ くそっ! 急いで自転車をこぐ ちくしょう 家の鍵をどこかで落とした方がよっぽどマシだぜ 駅へ着くと誰もいなかった そうだよな やっぱりみんな怒ってるだろうな 古泉なら待たせても何も感じないが朝比奈さんを待たせることはできないな ハルヒもだ 別の意味で しばらくすると眠い目をこすりながら朝比奈さんが来る あれ?どうしたんですか? 「あれ?キョンくん いつもより早いですね 12時集合なのに」 12時?俺は9時と聞いていたはずだが? 「へっ?私の間違いかしら やだぁ また怒られる」と真珠のような涙を浮かべてる それより確かに修復されたようで昨日のような大人な朝比奈さんではないようだ 俺としてはもうちょっと大人みくるでいてほしかったがな そう泣きじゃくってる朝比奈さんをなだめていると 古泉が早朝にもかかわらず他の人が見れば爽快ともいえる微笑みを振りまきながら 駅前へ歩を進めている もう元に戻りやがったのか 小さいほうがハルヒが落ち込んでる日よりも気分が良かったぜ こっちはいろいろあってろくに寝てねぇのになんでお前は寝起きなのにそんなに機嫌がよさそうなんだ 「おはようございます おぉ珍しくキョンくんがいるじゃないですか」いて悪いのかよ (昨日のことは機関の方でも騒がれていました なので僕もそんなに寝ていません) なんでそんなに平気にいられるのかを訊こうとしたが長門到着で訊くのをやめた もともと聞きたくもなかったがな 長門?お前の仕業か?時計の針を早めたのか?「ちがう」じゃぁなんだってんだ? 「みんなが覚えている涼宮ハルヒの決めた集合時間を3時間ずらしただけ」 そうだよな お前も眠かったんだよな 宇宙人でも睡眠時間は必要だもんな と一人で考え込んでいると今日限定食事の幹事兼団長さんがお出ましだ もう小さい姿じゃないらしい 一泡吹いただろうと言いたかったがそんなことを言った2秒後には絞められて逆に吹かされているだろう 「あれ?キョンもめずらしく早めに来てるじゃない ちゃんと昼飯は摂ったわね皆」 そんなの聞いてねぇぞ お前がおごりじゃなかったのかよ「・・・そういうことにした」おい! 「何言ってるの?あたしちゃんと言ったわよみんなに まさか食べてないって訳じゃないでしょうね」 ああ まったくそうだよ「ははぁんつまりあんた今お腹空いてるわけか・・・」 何を企んでいるんだよお前は「ってことで今日はキョンの奢りね あたしたちデザート欲しくなっちゃったから」 勝手に話すりかえんなよ お前の言ったことだろう でなんで朝比奈さんも了承してるんですか 長門そんな目で俺を見るな いくらでも奢るから 財布にあった重量感が消えそうだ 今の俺にとって 平凡な日常はこんなのかも知れない -fin-
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結局その後、俺達は飲めや騒げやなんとやらで一晩中宴会場で騒いでいた 分かった事は喜緑さんは備中と呼ばれる城下町出身の飯綱使で、眼鏡の男の人と一緒に旅をしていると言う事ぐらいだ。 その眼鏡の人は自分の名前が分からないらしく、それを含めた全ての記憶を探す旅をしているんだとか ==宴会所・朝食== ハルヒ「ねえアンタ」 眼鏡の男「なんだね?」 ハルヒ「なにか呼ばれたい名前とか無いの?眼鏡の男じゃ違和感があるわ」 眼鏡の男「そんなものはどうでも良かろう」 ハルヒ「でも眼鏡の男じゃなんかあれよねえ…」 喜緑さん「う~ん、そうですね。あ、そういえば東の方の城下町では会長なんて呼ばれてますよ?」 古泉「会長とは?」 喜緑さん「私もよく分らないんですけど…『短筒を愛する会』と呼ばれる集りのまとめ役を会長と呼ぶらしいんです」 ハルヒ「決まりね!そっちの方が呼びやすいし!アンタこれから会長って呼ぶわ」 会長「お、おいそんな勝手に…」 キョン「まあ、いいじゃないですか。眼鏡の人より呼びやすいですよ。」 会長「…まあ呼ばれ方にはそう拘らん。それより君達は此れからどうするんだね?」 キョン「此処でもう少し掘り出し物を探してから…比叡山に行こうと思っています」 会長「比叡山だと…?あらゆる生命を司る神々の住む領域…人呼んで【神霊域】と呼ばれるあの場所へか…?」 キョン「ええ、あそこが一番手っ取り早く腕を鍛える事が出来ると思うんです」 喜緑さん「やめた方がいいと思います…あの洞穴は神の領域。私の母もあの地で命を…」 キョン「・・・・」 会長「好きにすれば良い」 喜緑さん「でも・・・」 会長「止めはしない。だがもう少し時を置いても良いんじゃないか?」 キョン「・・・?」 古泉「具体的にどうすれば良いのでしょうか?」 会長「相模天狗の森に行け」 古泉「!」 ハルヒ「何よその相模天狗の森っていうのは」 古泉「僕から説明します。この城下町を少し北へ行ったところに一際不気味な森があります。それを万民は『天狗の森』と呼びます」 キョン「なんだそりゃ?天狗と戦えとでも言うのか?」 会長「その通りだ。今の君達の力がどれ程の物かは知らん。だが相模天狗と言えば古来より伝承されてきた仙術を駆使する、いわゆる仙人だ。噂によれば、かなり好戦的とも聞く。経験に勝る知恵無しとでも言うべきか…比叡山に行くつもりならその前に寄ってみて損は無いだろう。腕試し、と言ったところか」 キョン「なるほど…わかりました。色々ありがとうございました」 喜緑さん「良いんです。久しぶりに楽しかったですし・・・そうだ!今日は皆様一緒に相模市場を周りませんか?」 ハルヒ「いいわよ!有益な情報を提供してもらったし人数は多い方が楽しいわ!!」 古泉「どうやら決まりのようですね。」 長門「・・・決まり」 うお長門! 今日初めて声を聞いたぜ あれ・・・朝比奈さんは? ハルヒ「みくるちゃんなら知らない女の子に連れられてどっか行っちゃったわよ。アタシも起きたところで寝ぼけてたから止められなかったのよね」 な、なんですとっ!? ==相模城下町・市場== ???「どうだいこのお茶っ葉!めがっさいい品じゃないかなっ!!どうにょろ?」 みくる「いい品ですぅ~これも買いですぅ!」 ???「はい毎度ありぃ!」 みくる「このお店は広くて大きくてどんなお茶っ葉でもありますぅ~凄いですぅ」 ???「相模市場の中でもこの鶴屋商店はめがっさ人気の店なのさ!刀、鎧、薬、食糧なんでもござれって感じだねっ!」 みくる「こんないい店に連れてきてくれて嬉しいですぅ。本当にありがとうございますぅ~」 ???「良いって良いって!うちの親父がやってる店だからねこれっ!」 みくる「ふぇえ~!?そうだったんですかぁ?」 鶴屋さん「そうそう!アタシのことは鶴屋さんって呼んでくれていいよっ!」 みくる「私は朝比奈みくるって言います。宜しくです鶴屋さん」 鶴屋さん「よろしくっ!」 会長「私も見たぞ。確か鶴屋商店の若い娘に連れられていったな」 ハルヒ「鶴屋商店?」 会長「相模商店の中で最大の権力を持つ鶴屋家の営む店だ」 キョン「とりあえずその鶴屋商店に案内してください!」 会長「うむ。急ぐのならば走るぞ。付いてこい」 みくる「あ、みなさぁ~ん」 鶴屋さん「ん?みくるの知り合いにょろ?」 みくる「旅の仲間なんです」 キョン「あっ朝比奈さん・・・・ぜえぜえ・・」 ハルヒ「あんた早いわよ・・・はあはあ・・」 会長「こっ・・・これぐらいの速度で無ければ走るとは言わん・・・」 喜緑さん「何気合い入れて走ってるんですか・・・もう・・・」 会長「き、気合いなど入れてない!」 喜緑さん「隠したってバレバレですよ~」 会長「ま、全く何を言っているのだか」 古泉「それより朝比奈さん、ご無事で何よりです」 長門「何より・・」 みくる「ふ、ふえ?」 鶴屋さん「そういう事にょろか~ごめんよーこの子があんまりにも可愛いもんだからつい手を引きたくなったのさ」 うほっ・・・いつか見た相模美人・・・ この店の人だったんだな 流石にいい店にはいい美人がいると言ったところか・・ しかし・・・朝比奈さんまでとは言わないが・・・大盛り・・・って何を考えているんだ俺は!? 話を聞くところによると、鶴屋さんは宿屋にある物を配達しに来たらしい その時に宿の入り口で寝起きの背伸びをしている朝比奈さんを見て何となく自分の店に連れて行きたくなったらしい 動機が素晴らしく無茶苦茶だな…この人は それから遠慮する俺達を遮り、鶴屋さんがお茶と団子を御馳走してくださった ハルヒも長門も鶴屋さんとは非常に気が合うらしく、まあこれはこれで良かったと思っている。 楽しい時間を過ごす内に、日はやがて傾き、俺達は宿に戻る事になった 長門も古泉も鶴屋商店で自分の買い物をすませたらしい さて、あと一つだな・・・ ==宿屋・キョン、古泉部屋== 朝、ゆっくりと顔を見せる日の出を見つめながら、俺は一つの懸案事項を抱えていた。 それは平泉の洞窟で手に入れたこの刀…鋼忍刀(義経刀)の事である。 キョン(なぜ抜けないんだ・・・?) そう、抜けないのである。 洞窟で一度抜いたきり、後から何度やっても鞘からこの刀を抜くことが出来なかったのだ 俺が足りない頭を動かして、必死に鞘から刀を抜く方法を考えていると古泉が起きてきた 古泉「…どうもおはよう御座います。どうかされましたか?何か思い詰めているような顔付きですが・・・」 キョン「ああ、少しな」 古泉「僕で良ければ御話を伺いますよ?」 古泉「成程…つまりあれから一度も抜刀していないと?」 キョン「ああ、手入れも出来ない」 古泉「昨日、鶴屋さんに少しお話を伺ったのですが、この町の外れに宗兵衛と言う名匠が住まれていらっしゃるそうです。その方なら何か分かるかも知れません」 キョン「そうだな。今日はそこに行ってみるか」 古泉「お供しますよ。涼宮さん達はどうされます?」 キョン「あいつらも連れて行こう。特にハルヒは愛用の双剣が欠けちまったらしいからな」 古泉「了解しました」 ==相模城下町付近・山道== 鬼道丸「あの民家か…」 影の軍中忍「そのようです。捉えますか?」 鬼道丸「その必要は無い。私は頼み事を行う立場にいる。成らば、剣術家として最大限の礼儀を払うべきは、この私だろう」 影の軍中忍「相も変わらぬ剣術家精神…感服致します」 鬼道丸「行くぞ・・・」 ===相模町外れ・山道寄り== キョン「あの民家がそうなのか?」 古泉「町の人の情報によると、そうらしいですね」 ハルヒ「早くアタシの双剣直してもらいたいわ」 キョン「先に俺の刀を説明するぞ」 ハルヒ「別にいいわよ。アタシは急ぎじゃないし」 みくる「ふ、ふえええ!」 ハルヒ「どうしたのみくるちゃん?」 みくる「あ…あれ…」 ハルヒ「へ?」 みくる「ほらあそこに・・・」 ハルヒ「…!あれは」 キョン「どうしたハルヒ?」 ハルヒ「キョン、あれって影の軍じゃないの?」 黒い忍者服に身を包んだ群衆…間違いない!! キョン「!!・・・確かにそうだ!」 ハルヒ「まさか…」 古泉「どうやら目的は僕達と同じあの小屋にあるようですね」 ハルヒ「何をしに来たのかしら?」 キョン「何でもいい!あいつらの事だから何か悪事を仕出かすに違いない!」 古泉「しかしその考えは聊か早計では…」 ハルヒ「あいつらは信長が動かす影の軍よ?いい事なんかする筈ないわ!!」 そうだ、あいつらが今までどんな事をしてきたか考えれば俺達が成すべきことは決まっている!! キョン「行くぞみんな!」 涼宮ハルヒの忍劇11